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設計・設備

工場の粉塵対策はどう進める?
発生源の封じ込めから局所クリーン化までの打ち手

最終更新:2026年9月25日

工場の粉塵対策はどう進める? 発生源の封じ込めから局所クリーン化までの打ち手設計・設備工場の粉塵対策はどう進める?発生源の封じ込めから局所クリーン化までの打ち手

工場の粉塵対策は、発生源を封じ込める、発生源で吸い取る、区切って広げない、持ち込まず溜めない、製品側だけを囲うの5段階を、発生源に近い順に打つのが基本です。手前の段階ほど設備が小さく、後ろへ進むほど費用がかさみます。

ただし、何のための対策かで正解が変わります。作業者の健康を守るなら、粉じん障害防止規則が求める局所排気装置や作業環境測定が軸になります。製品への異物付着を防ぐなら、粒子の数を測り、製品の周りだけを清浄にする局所クリーン化が効きます。

この記事では、目的別の対策の違い、5段階の打ち方、法令が求める設備と記録、ほこりの発生源の見つけ方、局所クリーン化の考え方、囲う向きを間違えたときに起きることまでを、発注担当者向けに整理します。

目次
  1. 工場の粉塵対策は目的で3つに分かれる
  2. 粉塵対策は発生源に近い順に5段階で打つ
  3. 粉塵対策で粉じん則が求める設備と記録
  4. 工場のほこり対策は発塵源の特定から
  5. 局所クリーン化で製品だけを守る
  6. 粉塵対策で囲う向きを間違えない
  7. 工場の粉塵対策を相談する前の準備
  8. 工場の粉塵対策に関するよくある質問

工場の粉塵対策は目的で3つに分かれる

工場の粉塵対策は、作業者の健康を守る対策、製品の品質を守る対策、粉じん爆発や設備の故障を防ぐ対策の3つに分かれます。守る対象が違えば測る物差しも効く設備も変わるため、最初に目的を決めてください。

発注の現場でよく起きるのが、「粉じん対策はしているのに、製品の異物不良が減らない」という食い違いです。原因の多くは、健康のための設備と品質のための設備を同じものだと考えている点にあります。

工場の粉塵対策を目的別に見た違い
目的守る対象測る物差し中心になる対策
健康作業者空気中の粉じんの濃度(重さ)局所排気装置、湿式化、呼吸用保護具
品質製品・部品粒径ごとの粒子の個数発塵源の除去、区画、局所クリーン化
爆発・設備建屋・設備堆積の量と、粉体の可燃性堆積させない清掃、集塵、防爆の検討

健康対策の物差しは重さで、吸い込むと体に残る大きさの粉じんが中心です。品質対策で問題になるのは、目に見えない微粒子の数です。重さで見て基準内の部屋でも、微粒子の数が多ければ製品の不良は減りません。同じ「粉塵」でも、測る単位が違うと押さえておくと、見積もりの前提がずれにくくなります。

小麦粉や樹脂、金属粉などの可燃性の粉じんは、空気中に舞った状態で着火すると粉じん爆発を起こすおそれがあります。扱う粉体が可燃性なら、集塵機やクリーン化の設備に防爆の要否が加わります。設備側の考え方は防爆対応のクリーンルームの比較ページにまとめています。

粉塵対策は発生源に近い順に5段階で打つ

粉塵対策は、発生源に近いところで止めるほど小さな設備で済みます。封じ込める、吸い取る、区切る、持ち込まない、製品側を囲うの順に検討し、手前で足りなければ次の段階へ進むのが費用を抑える順番です。

粉塵対策の5段階と手段の例
段階手段の例向いている場面注意点
①封じ込める密閉カバー、湿式加工、湿潤化発生源が特定の装置に限られる水を嫌う製品や装置では湿潤化を使えない
②吸い取る局所排気装置、集塵機、プッシュプル型換気装置切断・研磨・投入など作業点が決まっているフードを発生源から離すと吸い込めない
③区切るパーテーション、ビニールカーテン、ゾーニング発生工程と清浄にしたい工程が同じ建屋にある区切るだけでは粉じんは減らない
④持ち込まない・溜めない清掃、搬入動線の分離、作業服の管理外からの持ち込みや床の堆積が主因運用で崩れやすく、手順と記録が要る
⑤製品側を囲うクリーンブース、クリーンベンチ、FFU製品が露出する作業点が限られる①〜④が済んでいないとフィルタが早く詰まる

粉じん対策は一般に「発生させない・拡散させない・吸入させない」の3原則で説明されます。上表の①〜③はこの3原則のうち設備で打つ部分にあたり、製品の品質まで守る場合に④と⑤が加わります。健康目的だけなら③までと保護具で済むことも多く、⑤は品質目的のときに初めて検討する段階です。

局所排気装置は、発生源の近くで粉じんを吸い込み、除じん装置を通してから排出する設備です。粉じん障害防止規則は、外付け式フードを発生源にできるだけ近い位置に設けるよう求めています。フードの位置が悪いと、同じ風量でも吸い込めない粉じんが増えます。設置位置は見積もりの段階で図面を出させて確認してください。

③の区切る対策は、現場で最も始めやすい方法です。ただしビニールカーテンやパーテーションは粉じんを減らす設備ではなく、広がる範囲を限る設備にすぎません。区切った内側に溜まる粉じんは、②の吸い取る設備で外へ出す必要があります。

粉塵対策で粉じん則が求める設備と記録

粉じん障害防止規則は、特定粉じん発生源に密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、湿潤な状態に保つための設備のいずれか、または同等以上の措置を求めています。設置後の定期検査と記録の保存も義務です。

特定粉じん作業とは、粉じん作業のうち、その粉じん発生源が特定粉じん発生源であるものです。粉じん作業そのものは規則の別表第一に列挙されており、自社の工程が該当するかどうかで義務の範囲が変わります。主な条文を、発注者が押さえるべき順に並べると次のとおりです。

粉じん障害防止規則の主な義務と頻度
条文求めていること頻度・保存期間
第4条特定粉じん発生源に、密閉する設備・局所排気装置・プッシュプル型換気装置・湿潤な状態に保つための設備のいずれか、または同等以上の措置設置時
第11条局所排気装置の外付け式フードは発生源にできるだけ近い位置に。除じん装置は除じん後の空気が通る位置に設置時
第17条・第18条局所排気装置・プッシュプル型換気装置・除じん装置の定期自主検査1年以内ごとに1回。記録は3年間保存
第23条粉じん作業を行う作業場以外の場所に休憩設備を設ける常設
第24条粉じん作業を行う屋内の作業場所の清掃毎日1回以上。加えて1月以内ごとに1回、真空掃除機や水洗など粉じんの飛散しない方法で
第25条・第26条常時特定粉じん作業が行われる屋内作業場の、空気中の粉じんの濃度の測定6月以内ごとに1回。記録は7年間保存
第27条別表第三に掲げる作業に従事させる場合の、有効な呼吸用保護具の使用作業のつど

上表は2026年9月11日に厚生労働省の法令等データベース(粉じん障害防止規則)で条文を確認し、要点をまとめたものです。対象になる作業は別表で細かく決まっているため、自社の工程が該当するかは条文と所轄の労働基準監督署で確認してください。

品質を守るための対策は、この規則の外側にあります。規則を満たしても製品の異物対策にはならず、逆にクリーンブースを入れても規則の義務はなくなりません。両方を1つの設備でまかなおうとせず、目的ごとに要件を分けて仕様書に書いてください。

工場のほこり対策は発塵源の特定から

工場のほこり対策は、どこから出ているかを先に特定することから始めます。発塵とは、人や物、設備から粒子が発生することです。発生源が分からないまま空調やブースを足しても、原因が残る限り効果は長続きしません。

工場で多い発塵源と対策の例
発塵源出る場面対策の例
人歩行、作業服、髪、皮膚作業服と帽子の管理、入室前の除塵、動線の短縮
梱包材段ボールの開梱、紙の持ち込み開梱場所の分離、段ボールを清浄区域に入れない
床・壁通路の堆積、塗装の劣化、台車やフォークリフトの走行定期清掃、床の補修、走行区域の分離
加工設備切断、研磨、搬送、摺動部カバー、局所排気、発生源の近くでの集塵
外気出入口、シャッター、換気口前室や二重扉、給気側のフィルタ

発生源を見つけるには、パーティクルカウンターで場所と時間帯を変えて粒子数を測るのが有効です。始業直後、搬入の時間帯、清掃の直後などで数値を比べると、どの作業で粒子が増えるかが見えてきます。測定の前の簡易な確認なら、室内を暗くして強い光を横から当てると、舞い上がる粒子が見えやすくなります。

見落とされやすいのが人と段ボールです。人は動くたびに作業服や皮膚から粒子を出し、段ボールは開けるたびに紙粉を出します。清浄にしたい区域へ段ボールごと持ち込まないだけで改善する工程は少なくありません。人の持ち込みを減らす手順はクリーンルームの入室手順、入口で粒子を落とす設備はエアシャワーの解説で扱っています。

床から出る粒子も、発注前に確認したい項目です。塗装が剥がれた床や、コンクリートがむき出しの床は、台車が通るたびに粉じんを出します。清浄度を求める区域の床材の選び方はクリーンルームの床材にまとめています。

局所クリーン化で製品だけを守る

局所クリーン化とは、工場全体ではなく製品が露出する作業点だけを囲い、フィルタを通した清浄な空気を送って、その範囲の清浄度だけを上げる方法です。建屋全体をクリーンルームにするより、初期費用も電気代も抑えやすくなります。

局所クリーン化の方式と清浄にする範囲
方式清浄にする範囲向いている場面
クリーンベンチ作業台の上1人で行う検査や組立
クリーンブース作業点を囲った数㎡から限られた工程を既存の建屋の中で清浄にする
クリーンルーム部屋全体工程全体が清浄度を必要とする

価格の手がかりとして、ホクト総研の価格表では、4㎡・クラス100,000のクリーンブースが75万円からとされています。同社は運搬・設置工事・試運転調整・測定費をサイズと設置地域により別途見積もりと注記しています(2026年9月11日確認)。方式ごとの価格の幅はクリーンブースとは、部屋全体の費用はクリーンルームの費用で比べられます。

囲った範囲の清浄度は、ISO 14644-1で定められた等級で指定します。空気1立方メートルあたりの粒子数の上限で等級が決まり、規格は日本産業標準調査会(JISC)でJIS規格として検索できます。等級の読み方はクリーンルームのクラス早見表、作業台単位で足りるかどうかの判断はクリーンベンチの解説をご覧ください。

局所クリーン化には前提があります。前の段階の粉塵対策が済んでいない場所でブースを動かすと、フィルタがすぐに詰まり、交換費用がかさみます。天井に並べるFFUの仕組みはFFUの解説、フィルタの交換時期の決め方はHEPAフィルターの交換頻度で扱っています。

粉塵対策で囲う向きを間違えない

粉塵対策で囲いを使うときは、粉じんを出す工程を囲うのか、製品を守る工程を囲うのかで、室圧の向きが逆になります。製品を守る囲いは中を陽圧に、粉じんを閉じ込める囲いは中を陰圧にするのが基本です。

製品を守る囲いと粉じんを閉じ込める囲いの違い
項目製品を守る囲い(陽圧)粉じんを閉じ込める囲い(陰圧)
中の気圧周囲より高い周囲より低い
空気の流れ中から外へ外から中へ
フィルタの位置給気側排気側
典型的な設備クリーンブース、クリーンベンチ囲い式フードの局所排気、陰圧ブース

向きを間違えると、対策がそのまま逆効果になります。粉じんを出す研磨工程を陽圧の囲いで覆うと、中の粉じんを周囲へ押し出すことになります。反対に、製品を守りたい工程を陰圧で囲うと、周囲の汚れた空気を中へ引き込みます。「囲えば粉塵は防げる」と考えて、向きを仕様書に書かないまま発注するのが最も避けたい失敗です。

発生工程と清浄工程が隣り合う場合は、両方の囲いを組み合わせます。発生側を陰圧にして吸い取り、清浄側を陽圧にして押し返すと、境目で空気の流れがそろいます。封じ込め側の設計は陰圧クリーンブースの比較ページ、室圧の差の考え方はクリーンルームの換気回数と差圧で解説しています。

次の条件に当てはまる場合は、囲いによる局所クリーン化を見送り、部屋単位の設計から検討してください。作業者が囲いの中に常時入る、工程全体に清浄度が要る、扱う粉体が可燃性で防爆が要る、の3つです。いずれも囲いだけでは要件を満たしにくい条件です。

工場の粉塵対策を相談する前の準備

工場の粉塵対策を施工会社に相談する前に、目的、発生源、測定値、守りたい範囲の4点を整理しておくと、各社の提案を同じ条件で比べられます。品質目的なら、粒子の個数を測った結果があるかどうかで提案の精度が変わります。

  1. 目的——健康・品質・爆発のどれを守るのか。複数なら優先順位も決めます
  2. 発生源——どの装置・作業・動線から出ているか。分からなければ測定から依頼します
  3. 測定値——健康目的なら粉じんの濃度、品質目的なら粒径ごとの粒子数。現状の数値が比較の起点になります
  4. 守りたい範囲——作業台なのか、工程なのか、部屋全体なのか。範囲で方式と費用が大きく変わります

健康目的の局所排気は産業用の換気・集塵設備を扱う会社、品質目的の局所クリーン化はクリーンルームの設計施工会社が主な相談先になります。両方を1社にまとめて頼む場合は、両方の実績を公式サイトで確認してください。相談から引き渡しまでの流れはクリーンルームの施工手順にまとめています。

当サイトでは、クリーンブースから部屋単位のクリーンルームまで対応する設計施工会社を、クリーンルーム設計施工会社の比較ページで公表情報つきで並べています。食品工場で異物対策を検討している場合は食品工場のクリーンルームの比較ページから探せます。

粉じんではなく有機溶剤や酸の蒸気を作業点で排気したい場合は、ドラフトチャンバーの原理と選び方もあわせてご覧ください。

参照:厚生労働省 法令等データベース「粉じん障害防止規則」/日本産業標準調査会(JISC)(いずれも2026年9月11日確認)

工場の粉塵対策に関するよくある質問

工場の粉塵対策について、発生源の特定から始める理由、集塵機とクリーンブースの守る対象の違い、粉じん則の作業環境測定の頻度、部屋全体のクリーンルームが必要かなど、現場で多い質問に本文の内容をもとに答えます。

工場の粉塵対策は何から始めればよいですか?

発生源の特定から始めます。どの装置や作業から粉じんが出ているかを確認し、発生源を封じ込める、吸い取る、区切る、持ち込まない、製品側を囲うの順に、発生源に近い段階から検討してください。手前の段階ほど小さな設備で済みます。

集塵機とクリーンブースはどう違いますか?

守る対象が違います。集塵機や局所排気装置は発生源の粉じんを吸い取って作業者や周囲を守る設備で、クリーンブースはフィルタを通した清浄な空気で囲いの中の製品を守る設備です。品質目的でも、発生源の粉じんが多い場合は集塵を先に済ませる必要があります。

粉じん則の作業環境測定はどのくらいの頻度ですか?

粉じん障害防止規則では、常時特定粉じん作業が行われる屋内作業場について、6月以内ごとに1回、定期に空気中の粉じんの濃度を測定し、記録を7年間保存するよう定めています(2026年9月11日に条文を確認)。自社の作業が対象になるかは、条文と所轄の労働基準監督署で確認してください。

工場のほこり対策にクリーンルームは必要ですか?

多くの場合、部屋全体のクリーンルームは必要ありません。製品が露出する作業点が限られていれば、クリーンブースやクリーンベンチによる局所クリーン化で足ります。作業者が常時中に入る工程や、工程全体に清浄度が要る場合は、部屋単位の設計を検討してください。

この記事を書いた人

執筆・編集:クリーンルームラボ 編集部

クリーンルームの設計施工会社について、対応分野・施工体制・公表実績を公式情報にもとづいてまとめています。

参照した情報:厚生労働省 法令等データベース「粉じん障害防止規則」/日本産業標準調査会(JISC)/ホクト総研 オーダークリーンブース(価格表)(2026年8月29日確認)

最終更新:2026年9月25日