クリーンルームが必要でも、建屋ごと作る必要があるとは限りません。作業点が限られている工程なら、クリーンブース(簡易クリーンルーム)で足りることがあります。公表されている価格表では、4㎡・クラス100,000で75万円から、25㎡・クラス100でも560万円からです。
この記事では、クリーンブースとは何か、簡易クリーンルームとどう呼び分けられているのかを整理したうえで、公表価格から読める費用の目安、本設のクリーンルームとの使い分け、導入前に確認すべきことを扱います。局所清浄化で足りる工程に本設を作るのは、初期費用と運転費の両方で損をします。
目次
クリーンブースとは何か
結論から言うと、両者に明確な線引きはありません。会社によって呼び分けが違うため、名称ではなく仕様(清浄度・寸法・空調の有無)で比べる必要があります。
クリーンブースとは、フレームにビニールカーテンやパネルを張り、天井にファンフィルタユニットを載せて、既存の部屋の中に局所的な清浄空間をつくる組立式の設備のことです。簡易クリーンルームとほぼ同じ意味で使われますが、会社によって呼び分けがあります(2026年8月30日時点)。
呼び方は現場によってまちまちですが、実務では次のように区別されています。
| 種類 | 構造 | 位置づけ |
|---|---|---|
| クリーンブース | フレームにビニールカーテンやパネルを張り、天井にファンフィルタユニットを載せた組立式 | 部屋の中に置く「箱」。移設・撤去できる |
| 簡易クリーンルーム | クリーンブースとほぼ同義で使われる。パネル仕様で気密性を高めたものを指すこともある | 本設と簡易の境界は明確な定義があるわけではない |
| 本設のクリーンルーム | 建築と一体で作る。専用の空調機、ダクト、内装、床、前室で構成する | 建物の一部。移設できない |
| クリーンベンチ・安全キャビネット | 作業台のサイズで局所を清浄化する装置 | 1人が手元で作業する範囲だけを清浄にする |
選ぶ基準は「清浄にしたい範囲の広さ」です。手元だけならクリーンベンチ、数㎡ならクリーンブース、部屋全体で人も装置も入るなら本設、という順になります。範囲が広いほど費用も運転費も上がるため、必要な範囲を最小に絞ることが最も効くコスト対策になります。
なお、局所クリーン化を検討する前に発生源側で打てる手が残っていることもあります。順番は工場の粉塵対策の5段階で整理しています。
クリーンブースの構造と3つの型
クリーンブースは、囲いの材質で3つに分かれます。ビニールカーテン式・パネル式・その中間で、清浄度の上限と移設のしやすさが逆の関係になります。囲いが軽いほど動かしやすく、重いほど清浄度と気密が安定します。
共通する構成要素は次の3つです。この3つ以外は、用途に応じて足していく付帯部分になります。
- フレーム——アルミなどの骨組み。天井のファンフィルタユニットを支える強度が要ります
- ファンフィルタユニット(FFU)——送風機とHEPAフィルタを一体にした天井ユニット。台数で清浄度と風速が決まります
- 囲い——ビニールカーテンまたはパネル。清浄な空気を室内に留め、外部の空気の流入を抑えます
| 型 | 囲いの材質 | 向いている場面 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| カーテン式 | ビニールカーテン(帯電防止品もある) | 試作、短期利用、レイアウト変更が多い工程 | 気密が低く、外の環境の影響を受けやすい。カーテンの劣化で交換が要る |
| パネル式 | 鋼板・樹脂などのパネル | 常設に近い使い方。高い清浄度を安定させたい工程 | 重量と価格が上がり、移設の自由度が下がる |
| 併用型 | 下部がパネル、上部や出入口がカーテン | 清浄度と可変性の両方が要る工程 | 仕様が会社ごとに違うため、比較には図面が要る |
見積もりを比べるときは、この型と、FFUの台数・寸法・清浄度クラスを揃えてください。同じ「クリーンブース1台」でも、型が違えば金額の意味が変わります。FFUに入るHEPAフィルタの交換は運用中の固定費になるため、HEPAフィルターの交換時期もあわせて確認してください。
クリーンブースの価格は公表されている
本設のクリーンルームと違い、クリーンブースの領域には価格表を公開している会社があります。ホクト総研のオーダークリーンブースの公表価格は次のとおりです。
| サイズ(面積) | クラス100,000 | クラス10,000 | クラス1,000 | クラス100 |
|---|---|---|---|---|
| 2,000×2,000(4㎡) | 750,000円〜 | 900,000円〜 | 900,000円〜 | 1,200,000円〜 |
| 3,000×3,000(9㎡) | 1,100,000円〜 | 1,150,000円〜 | 1,500,000円〜 | 2,400,000円〜 |
| 4,000×4,000(16㎡) | 1,550,000円〜 | 1,900,000円〜 | 2,250,000円〜 | 3,650,000円〜 |
| 5,000×5,000(25㎡) | 2,250,000円〜 | 2,650,000円〜 | 3,250,000円〜 | 5,600,000円〜 |
この表から読めるのは、面積を広げるより清浄度を上げるほうが割高になるという傾向です。4㎡でクラス100,000からクラス100へ上げると1.6倍ですが、25㎡では2.5倍になります。必要な清浄度の範囲を絞れるかどうかが、費用を左右します。
クリーンブースで足りるか判断する
判断の分かれ目は、部屋全体の温湿度管理が要るかどうかです。局所の清浄度だけでよいなら簡易型で足り、温湿度まで管理するなら本設が要ります。
本設と簡易のどちらを選ぶかは、次の5項目で判断できます。
| 判断項目 | 簡易で足りる | 本設が要る |
|---|---|---|
| 清浄にする範囲 | 作業点まわりの数㎡〜十数㎡ | 部屋全体。人と装置が常時入る |
| 温湿度の要求 | 室内の空調で足りる | ±0.5℃以下や低露点が必要 |
| 差圧の管理 | 厳密な差圧管理が不要 | 多室構成でカスケードが必要 |
| 規制の要求 | 社内基準・取引先の簡易な要求 | GMPの無菌区域など構造設備の要件がある |
| 将来の変更 | レイアウト変更・移設の可能性がある | 長期間同じ用途で使う |
簡易クリーンルームは移設・撤去できることが最大の利点です。試作段階、少量生産、テーマが変わる研究施設では、この可変性が本設にはない価値になります。研究施設での使い方は研究施設のクリーンルームで解説しています。
クリーンブースはレンタルもできる
短期の試作や期間限定の工程では、購入せずに借りる方法があります。ただし期間が長くなると購入より高くつくため、使用期間から逆算してください。
期間限定の用途であれば、購入せずに借りる方法があります。次のような場面で検討されます。
- 試作・立ち上げ期間だけ必要——量産の判断が出るまでの数か月
- 本設の改修中の代替——工事期間中の一時的な生産継続
- 短期の受注に対応する——特定案件のためだけに清浄環境が必要
ただし、レンタルは期間が長くなると購入より割高になります。使用期間の見込みが1年を超えるなら、購入との総額比較をしてください。判断するときは、次の項目を同じ土俵に載せます。
| 比較項目 | レンタル | 購入 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 月額のみ。設置費が別途か含みかを確認する | 本体+設置費が一度に発生する |
| 仕様の自由度 | 在庫品の寸法・清浄度から選ぶ | 寸法・清浄度・開口位置を指定できる |
| フィルタ交換 | 契約に含まれるかを確認する | 自社の維持費として計上する |
| 返却・撤去 | 期間終了時に引き取ってもらえる | 不要になったときの処分費が残る |
| 向く期間 | 数か月〜1年程度 | 1年を超えて継続する見込みがある場合 |
レンタルの可否と条件は会社によって異なります。設計施工を主とする会社は受注生産が中心のため、レンタルを前提にするなら機器メーカーやレンタル事業者まで問い合わせ先を広げてください。初回の問い合わせ時に取り扱いの有無を確認するのが確実です。
クリーンブースの導入前に確認すること
設置してから「入らない」「電源が足りない」となる例があります。搬入経路、天井高、電源容量、排気の逃がし先を先に確認してください。
安く早く導入できる反面、確認を怠ると期待した清浄度が出ません。次の6点は、設置前でなければ手当てが効かない項目です。
| 確認項目 | 見るところ | 見落とすと起きること |
|---|---|---|
| 設置場所の天井高 | ファンフィルタユニットの分の高さ。既存の梁・配管・照明との干渉 | 搬入後に納まらず、寸法を作り直すことになる |
| 床の状態 | 設置面の平滑さと清掃のしやすさ | 床から発塵し、ブース内の清浄度が上がらない |
| 周囲の環境 | ブースの外の清浄度と人の動線 | 出入りのたびに粒子が持ち込まれる |
| 電源容量 | ファンフィルタユニットの台数分の容量と配線経路 | 増設工事が別途発生し、予算が動く |
| 排熱 | ブース内の装置の発熱量と、熱の逃がし先 | 密閉して温度が上がり、作業環境と製品品質に影響する |
| 入退室の手順 | エアシャワー・粘着マット・更衣の運用 | 設備を入れても清浄度が安定しない |
「ブースを置けば清浄になる」わけではありません。清浄度を決めるのは設備と運用の両方です。入退室の手順まで含めて設計してください。付帯設備はエアシャワーの価格と選び方で解説しています。
クリーンブースと簡易クリーンルームに関するよくある質問
クリーンブースと簡易クリーンルームについて、公表価格の目安、クラス100まで対応できるか、本設のクリーンルームとどちらを選ぶべきかなど、導入前に多い質問に本文の内容をもとに答えます。
簡易クリーンルームの価格はいくらですか?
公表価格表では、4㎡・クラス100,000で75万円から、25㎡・クラス100で560万円からとされています(ホクト総研・税別・2026年8月29日確認)。同社は運搬・設置工事・試運転調整・測定費はサイズと設置地域により異なるため別途見積もりになると注記しています。
簡易クリーンルームでも高い清浄度は出せますか?
公表価格表ではクラス100(ISOクラス5相当)まで用意されています。ただし清浄度を保てるかは設置環境と運用にも左右されます。ブースの外が汚れていれば出入りのたびに持ち込まれるため、周囲の環境と入退室の手順まで含めて検討してください。
簡易クリーンルームと本設のクリーンルームはどちらを選ぶべきですか?
清浄にしたい範囲の広さで決まります。作業点まわりの数㎡なら簡易で足りることが多く、部屋全体に人と装置が常時入るなら本設が必要です。GMPの無菌区域のように構造設備の要件が定められている場合も本設になります。
この記事を書いた人
執筆・編集:クリーンルームラボ 編集部
クリーンルームの設計施工会社について、対応分野・施工体制・公表実績を公式情報にもとづいてまとめています。
参照した情報:伸榮産業 クリーンブースとは?特注設計施工/公益社団法人 日本空気清浄協会(JACA)/トヨシマ電機 クリーンブース・クリーンルームの施工実績/日本エアーテック オールインワンクリーンルーム(仕様・工期の公表)/当サイト調べ(掲載12社の公式サイトを2026年8月29日に確認)(2026年8月29日確認)
最終更新:2026年9月25日
