クリーンベンチのクラスは、作業台上でクラス100(ISOクラス5)が一般的な目安です。日本エアーテックは、垂直層流型・水平層流型のいずれも作業台上の空気清浄度はクラス100(ISOクラス5)で対応できると公表しています(2026年9月5日確認)。
ただし、日本産業規格JIS B 9922は清浄度を1つに固定しておらず、製品ごとの仕様値として定め、作業空間の作業高さで測ると決めています。装置を置いた部屋がクラス100になるわけではなく、取扱物から作業者を守る装置でもありません。
この記事では、クラス100とISOクラス5の基準値、JIS B 9922の風速と測り方、清浄度が下がる原因、安全キャビネットやクリーンブースとの使い分けを、規格とメーカーの公表資料にあたって整理します。
目次
クリーンベンチのクラスはISOクラス5
クリーンベンチとは、HEPAフィルターでろ過した空気を作業台上に一方向に流し、作業対象を清浄な状態に保つ清浄作業台のことです。作業台上の空気清浄度はクラス100(ISOクラス5)で対応できると、日本エアーテックが公表しています。
気流の向きで2つの型に分かれます。同社の公表資料では、多くは垂直層流型で前面に上下スライドのシャッターが付いており、水平気流はフラットな物の検査や組み立てに用いられると説明されています。
クラス100は旧・米国連邦規格の表記で、現在のISO14644-1ではISOクラス5がおおむね対応します。基準体積も対象粒径も違うため厳密な等価ではありません。2つの系統の対応関係はクリーンルームのクラスの記事で早見表にしています。
| 装置 | 清浄になる範囲 | 清浄度の目安 |
|---|---|---|
| クリーンベンチ | 作業台の上だけ | クラス100(ISOクラス5) |
| クリーンブース | 仕切った作業区画。人が入れる | 用途により選定(ISOクラス5〜8) |
| クリーンルーム | 部屋全体 | 用途により選定(ISOクラス1〜9) |
※ベンチの清浄度は日本エアーテックの公表資料(2026年9月5日確認)。クリーンブース・クリーンルームは用途ごとに要求される清浄度が異なるため、範囲で示しています。
参照:日本エアーテック株式会社「クリーンベンチとは」(2026年9月5日確認)
クリーンベンチのクラス100の基準値
クラス100とは、0.5µm以上の粒子が空気1立方フィート(約28.3リットル)あたり100個以下の清浄度です。旧・米国連邦規格209の等級で、1立方メートルに直すと約3,530個になります。
現在の国際規格ISO 14644-1(国内ではJIS B 9920-1)では、0.5µm以上の粒子が1立方メートルあたり3,520個以下のISOクラス5が、これにおおむね対応します。
ISOクラスは、粒径ごとに粒子数の上限が決まっています。クリーンベンチのカタログでよく見るISOクラス5と、一段厳しいISOクラス4の上限は次のとおりです。
| 等級 | 0.1µm以上 | 0.2µm以上 | 0.3µm以上 | 0.5µm以上 | 1µm以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| ISOクラス4 | 10,000 | 2,370 | 1,020 | 352 | 83 |
| ISOクラス5 | 100,000 | 23,700 | 10,200 | 3,520 | 832 |
| クラス100(旧規格) | — | — | — | 約3,530 | — |
※単位は空気1立方メートルあたりの個数(上限)。ISOクラスはJIS B 9920-1:2019(ISO 14644-1:2015)の値(2026年9月24日確認)。クラス100の約3,530個は、1立方フィートあたり100個を1立方メートルに当サイトで換算した値です。
ISOクラスの数字が1つ小さくなると、上限の粒子数は10分の1になります。クラス100とISOクラス5は、基準の体積も粒径の決め方も違うため、厳密には同じではなく「おおむね対応する」関係です。仕様書や見積依頼では、どちらの規格の等級かを明記しておくと、測定と判定の方法まで食い違いが起きにくくなります。部屋全体の等級の早見表はクリーンルームのクラスの記事にまとめています。
参照:日本産業標準調査会(JISC)JIS検索「JIS B 9920-1:2019」(2026年9月24日確認)
クリーンベンチのクラスとJIS B 9922
クリーンベンチそのものの性能は、日本産業規格のJIS B 9922で定められています。対象は、送風機とHEPAフィルタまたはULPAフィルタを内蔵し、作業空間を一定の空気清浄度に維持する装置です。作業空間が負圧になる構造は対象外です。
清浄度は規格表のクラス1〜8から仕様値を定める
規格は、清浄度を1つの等級に固定していません。規格の表に示すクラス1〜クラス8のいずれかを仕様値として定め、試験でその値を満たすことを求めています。清浄度を測る作業空間は「空気吹出し面から作業面までの空間」と定義され、測定は作業空間を等面積に分けた区画の中央の作業高さで行います。
定格風速は0.3〜0.6m/s
風速は、定格風速を0.3〜0.6m/sの範囲とし、平均風速は定格風速の±20%以内、個々の測定点の風速は平均風速の±20%以内と定めています。風速を測るのは、吹出し面から0.1m下流の面です。メーカーの仕様表にある「吹出風速約0.45m/s」といった値も、この範囲に収まります。
吹出口のクラス100と作業空間の値は別
カタログのクラス表示が、どこで測った値かも確かめる必要があります。アズワンは自社製品について、搭載HEPAフィルタの仕様から吹き出し口の清浄度をクラス100としており、庫内の清浄度は簡易的な参考実測で保証値ではないと説明しています(2026年9月24日確認)。一方、日立産機システムはバイオ用の製品で作業室内の清浄度ISOクラス4を実現すると公表しています(2026年9月24日確認)。同じ「クラス」の表示でも、吹出口の値か作業空間の値かで意味が変わります。
メーカーごとの公表クラス・風速・型式はクリーンベンチのメーカー比較で一覧にしています。仕様書を取り寄せる段階で、清浄度が吹出口と作業空間のどちらの値か、どの状態で測ったかを確認してください。
参照:日本産業標準調査会(JISC)JIS検索「JIS B 9922:2001 クリーンベンチ」(2026年9月24日確認)
クリーンベンチの清浄度が下がる原因
クリーンベンチのカタログにあるクラス100は、吹出口や作業台上の決まった位置で測った値です。装置の外側や、シャッターを大きく開けた手前の空間は対象に入りません。
清浄度は測るときの状態でも変わります。ISO14644-1は設備の状態を建設完了時・非作業時・作業時の3つに分けており、人が動いている作業時の値が最も悪くなります。この装置も同じで、手を出し入れし、器具を持ち込むほど作業台上の気流は乱れます。
実務では次の3つが値を落とす原因になります。
- 前面シャッターの開けすぎ——一方向流が崩れ、室内の空気が作業域へ巻き込まれます
- 作業台上に物を置きすぎる——気流の通り道がふさがれ、物陰に淀みができます
- 設置場所の気流——空調の吹き出し口の直下や人の動線上では、外乱を受けやすくなります
部屋側の清浄度と混同しないことも大切です。装置を置けば室内がクラス100になるわけではなく、部屋の清浄度は換気回数と差圧で別に設計します。この考え方は換気回数と差圧の記事にまとめています。
クリーンベンチと安全キャビネットの違い
見た目が似ている2つの装置は、守る対象が違います。クリーンベンチが守るのは作業対象だけで、安全キャビネットは作業対象に加えて作業者と環境を守ります。
日本エアーテックは、安全キャビネットの最大の理由を「作業域で無菌作業が行えることと、作業域外へ取扱物からのエアロゾル漏洩を防止できること」と説明しています。同社によれば、安全キャビネットは日本空気清浄協会で規格化されたのち、現在は日本産業規格(JIS K 3800)として規格化され、クラスⅠ・Ⅱ・Ⅲに分類されています。
| 装置 | 作業対象を守る | 作業者・環境を守る | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| クリーンベンチ | ○ | × | 無菌操作、細胞培養、精密部品の組立・検査 |
| 安全キャビネット クラスⅠ | × | ○ | 排気にHEPAを装着。作業域には室内空気が流入するため無菌作業はできない |
| 安全キャビネット クラスⅡ | ○ | ○ | 最も多く使われる型。上面から層流が流れ、前面の流入気流がバリアーになる |
| 安全キャビネット クラスⅢ | ○ | ○ | 密閉構造のグローブボックス。最高危険度の病原体を扱う |
病原体や感染性のある試料を扱う作業を、クリーンベンチで代用することはできません。外へのエアロゾル漏洩を止める仕組みがないためです。逆に、無菌操作が目的で取扱物に危険性がないなら、ベンチで足ります。クラスⅡのタイプの違いや法令で設置が求められる場面は、安全キャビネットの記事で整理しています。
参照:日本エアーテック株式会社「安全キャビネットとは」(2026年9月5日確認)
クリーンベンチとクリーンブースの使い分け
清浄にしたい範囲で選び分けます。作業点だけを清浄にすればよいならクリーンベンチ、人が中に入って作業するならクリーンブースです。
ベンチは装置1台ぶんの設置スペースで済み、電源があれば動きます。一方、複数人で組み立てや充填を行う、大きな装置を清浄空間に入れる、といった要件になるとベンチでは収まりません。
費用の考え方も違います。クリーンブースは面積と清浄度で価格が動き、公表価格では4㎡75万円からの水準です。金額の内訳はクリーンブースの記事と費用の記事で扱っています。
判断に迷うときは、清浄空間に人が立ち入る必要があるかどうかで切り分けてください。立ち入るならブース、手だけを入れるならベンチです。
クリーンベンチの清浄度を保つ運用3点
導入したときの清浄度は、そのまま維持されるわけではありません。フィルターの目詰まり、気流を乱す置き方、設置場所の外乱の3つで数値は落ちていきます。日常の運用で押さえるのはこの3点です。
- フィルターの目詰まりを風速で見る——HEPAフィルターは塵埃を捕集するため目詰まりし、風速が下がって性能が落ちます。日本エアーテックは安全キャビネットについて、性能維持のため年1回の定期点検を推奨しています(2026年9月25日確認)
- 気流を乱さない置き方をする——吸い込み部の上に物を置かない、作業台上を空けておく。気流が乱れると清浄度は数値上も落ちます
- 設置環境を整える——空調の吹き出し直下や扉の開閉が多い場所を避け、装置の周囲に外乱の少ない状態をつくります
交換の判断基準は使用時間ではなく差圧です。定期点検で風速と差圧を記録し、その推移から交換時期を決めるのが実務的な運用になります。考え方はHEPAフィルターの交換頻度の記事で詳しく整理しています。
クリーンベンチだけでは要求を満たせないと分かった場合は、ブースや部屋の設計に切り替える判断が必要です。対応できる会社は設計施工会社の比較ページで、対応範囲と実績から絞り込めます。
参照:日本産業標準調査会(JISC)JIS検索(2026年9月5日確認)
クリーンベンチの清浄度に関するよくある質問
クリーンベンチの清浄度について、クラス100とISOクラス5の関係、部屋全体も清浄になるのか、病原体を扱えるか、安全キャビネットとの見分け方、点検の頻度、風速の基準など、導入前に多い質問に本文の内容をもとに答えます。
クリーンベンチの清浄度はクラス100ですか?
作業台上の空気清浄度はクラス100(ISOクラス5)で対応できると日本エアーテックが公表しています(2026年9月5日確認)。垂直層流型・水平層流型のどちらも同じ水準です。ただし清浄度が保証されるのは作業台の上であり、装置を置いた部屋全体ではありません。
クリーンベンチを置けば部屋もクリーンになりますか?
なりません。清浄になるのは作業台上の空間だけです。部屋の清浄度は換気回数・差圧・フィルターの構成で別に設計します。部屋ごと清浄にしたい場合はクリーンブースやクリーンルームを検討することになります。
クリーンベンチで病原体を扱ってもよいですか?
適しません。作業域外へのエアロゾル漏洩を防ぐ仕組みがないためです。感染性のある試料を扱う場合は、日本産業規格(JIS K 3800)で規格化された安全キャビネットを使います。クラスⅡが最も多く使われている型です。
クリーンベンチと安全キャビネットは見た目で見分けられますか?
外観だけでの判別は確実ではありません。安全キャビネットのクラスⅡは前面開口部から空気を吸い込むバリアー気流を持ち、排気にHEPAフィルターを備えます。銘板と仕様書でJIS K 3800への適合とクラス表示を確認するのが確実です。
クリーンベンチの点検はどれくらいの頻度で必要ですか?
HEPAフィルターは使用にともなって目詰まりし、風速が下がって性能が落ちます。日本エアーテックは安全キャビネットについて、性能維持のため年1回の定期点検を推奨しています(2026年9月25日確認)。クリーンベンチでも、風速と差圧を定期的に記録して推移から交換時期を判断する運用が現実的です。
クリーンベンチのクラス100とISOクラス5は同じですか?
おおむね対応しますが、厳密には同じではありません。クラス100は0.5µm以上の粒子が1立方フィートあたり100個以下(1立方メートル換算で約3,530個)、ISOクラス5は0.5µm以上が1立方メートルあたり3,520個以下です。基準の体積と粒径の決め方が違うため、仕様書ではどちらの規格の等級かを明記します。
クリーンベンチの風速に基準はありますか?
JIS B 9922は、定格風速を0.3〜0.6m/sの範囲とし、平均風速は定格風速の±20%以内、個々の測定点の風速は平均風速の±20%以内と定めています。風速は吹出し面から0.1m下流の面で測ります。
この記事を書いた人
執筆・編集:クリーンルームラボ 編集部
クリーンルームの設計施工会社について、対応分野・施工体制・公表実績を公式情報にもとづいてまとめています。
参照した情報:日本産業標準調査会(JISC)JIS検索(JIS B 9922:2001 クリーンベンチ/JIS B 9920-1:2019 クリーンルーム及び関連する制御環境-第1部)/日本エアーテック株式会社|クリーンベンチとは/日本エアーテック株式会社|安全キャビネットとは/アズワン株式会社 よくあるご質問「清浄度(クリーンクラス)を教えてください」/株式会社日立産機システム「バイオ用クリーンベンチ」/日本エアーテック株式会社|定期点検・フィルター交換(安全キャビネットの年1回の定期点検の推奨)(2026年8月29日確認)
最終更新:2026年9月25日
