「クラス」と「グレード」は同じものを指していません。ISOクラスは空気の清浄度を測る物差し、GMPのグレードA〜Dは作業の重要度で区域を分ける呼び方です。医薬品の案件で「グレードBで」と言われたとき、ISOクラスに読み替えるだけでは仕様になりません。
この記事では、GMPの4区分が何を分けているのか、ISO14644・JIS B 9920とどう重なるのか、食品のHACCPや再生医療の制度では何が変わるのかを整理します。清浄度の物差しと、業種ごとの製造管理のルールは別々に効いてきます。清浄度の等級そのものはクリーンルームのクラス早見表で扱っています。
目次
クリーンルームのグレードとは何か
クリーンルームのグレードとは、医薬品のGMPで製造区域をA・B・C・Dに分ける区分のことです。空気の清浄度を数値で表すISOクラスとは別の体系で、そこで行う作業の重要度によって区域を分けます(2026年8月30日時点)。
4つの区分は、無菌医薬品の製造で「どの作業をどこで行うか」に対応しています。
| グレード | 想定される区域 | 設備側で効いてくること |
|---|---|---|
| グレードA | 無菌操作を行う重要区域。充填部や開放操作を行う箇所の直上 | 局所的な一方向流と、その気流を乱さない機器配置が前提になる |
| グレードB | グレードAを取り囲む背景環境 | 室全体の清浄度と更衣・入退室の動線設計が中心になる |
| グレードC | 無菌医薬品製造の重要度がやや下がる工程を行う区域 | 室圧の階層と、隣室との差圧の向きを決める |
| グレードD | さらに重要度の下がる工程を行う清浄区域 | 一般区域との境界に更衣室・前室を置く |
各グレードに求められる浮遊粒子数・微生物の管理値は、適用される指針や査察の要求によって変わります。当サイトは数値の一覧を掲載しません。設計や契約で使う値は、必ず適用される規格・指針の原文と、要求元(取引先や当局)の文書で確認してください。二次的にまとめられた数値表を根拠にすると、改訂に追随できません。
クリーンルームのグレードの作業時と非作業時
グレードがISOクラスと決定的に違うのは、1つの区域に対して2つの状態で判定する点です。人がいない状態で基準を満たしていても、作業者が入って装置が動いている状態で崩れれば意味がありません。
| 状態 | 何を確認するか | 設計・見積もりへの影響 |
|---|---|---|
| 非作業時(at rest) | 設備が動いていて人がいない状態。設備そのものの性能 | 竣工時の判定条件になる。ここだけの見積もりは安く見える |
| 作業時(in operation) | 作業者が入り、工程が動いている状態 | 発塵量の想定が要る。換気回数と気流方式が変わる |
見積もりを比べるときは、どちらの状態で判定するかが揃っているかを必ず確認してください。「作業時にも満たすこと」を条件にすると、必要風量が増えて設備容量も電気代も上がります。この判定条件の書き方はクリーンルームの施工手順と見積もりの取り方で扱っています。
クリーンルームのグレードの規格
クリーンルームの規格とは、清浄度の測り方と等級の分け方を定めた国際規格および国内規格のことです。国際的にはISO 14644シリーズ、国内ではJIS B 9920が対応します。
仕様書には規格名と番号で書くのが確実です(2026年8月29日時点)。
クリーンルームの清浄度を定める国際規格がISO14644です。単一の規格ではなく、目的別に複数のパートで構成されています。
| パート | 扱う内容 | 実務で関わる場面 |
|---|---|---|
| ISO14644-1 | 浮遊粒子による清浄度の等級区分(ISOクラス) | 仕様書に書くクラスの根拠。竣工時の判定 |
| ISO14644-2 | 性能を継続的に確認するためのモニタリング | 運用開始後の定期測定の計画 |
| ISO14644-3 | 試験方法 | 気流、差圧、リークなどの測定手順 |
| ISO14644-4 | 設計・建設・スタートアップ | 計画段階の考え方 |
| ISO14644-5 | 運用 | 入室手順、清掃、持ち込み管理 |
| ISO14644-9 | 表面の粒子清浄度の等級区分 | 空気中だけでなく表面の管理が要る場合 |
日本国内ではJIS B 9920がISO14644に対応する規格として整備されています。国内の設計・施工ではJISが参照されることが多く、海外の親会社や取引先が絡む案件ではISOの番号で指定されることが多い、という使い分けが実務では見られます。
規格は改正されます。パートの構成や規格番号も変わることがあるため、設計・契約で使う場合は必ず最新の規格原文を確認してください。当サイトの記載は規格の全体像を示すもので、規格値の根拠にはできません。
クリーンルームのGMPとHACCPの違い
ISO14644は「空気がどれだけ清浄か」を測る物差しです。これに対して、GMPやHACCPは「どう作るか」を定めるルールで、清浄度はその一部として出てきます。両者は競合せず、重なって適用されます。
| 枠組み | 対象 | クリーンルームとの関係 |
|---|---|---|
| ISO14644/JIS B 9920 | すべての業種 | 清浄度の等級区分と測定方法を定める。数値の物差し |
| GMP(医薬品) | 医薬品・医薬部外品の製造 | 区域をグレードA〜Dで区分し、非作業時と作業時の2状態で評価する。バリデーションと文書化を要求する |
| HACCP(食品) | 食品の製造・加工 | 危害要因の分析と重要管理点の設定が中心。清浄度の数値指定が必須とは限らない |
| 再生医療関連の制度 | 細胞培養加工施設など | 構造設備の要件が定められ、許可・届出の対象になる |
三機工業は産業空調事業のページで、医薬品には「GMP対応の医療環境のバイオクリーンルーム」、食品工場には「HACCP対応のクリーンルーム」と、用途ごとに参照する枠組みを書き分けています。設計施工会社を選ぶときに、この書き分けができているかは判断材料の1つになります。
医薬品工場のクリーンルームのグレード区分
医薬品工場でグレードA〜Dの区分が直接適用されるのは、無菌医薬品を製造する区域です。錠剤や外用剤など非無菌製剤の工場では、製造区域の清浄度を製品のリスクに応じて事業者が定めます。
「医薬品工場だからグレードBが要る」とは限らず、どの製剤をどの工程で作るかが先に決まります。
医薬品工場の設計でグレードを使うときは、次の4点を仕様書に揃えると、設計施工会社の提案を同じ条件で比べられます。
- 区域ごとのグレード——秤量・調製・充填・包装のどの工程をどの区域で行い、それぞれ何グレードにするか
- 判定する状態——非作業時と作業時の両方で満たすことを求めるか
- 粒子と微生物の両方——グレードは浮遊粒子だけでなく浮遊菌・落下菌の管理を含みます。測り方は浮遊菌と落下菌の違いで解説しています
- 更衣と物の動線——一般区域からグレードの高い区域へ段階的に上がる更衣室と、物を渡すパスボックスの構成
各グレードの管理値は、適用される指針(無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針、PIC/S GMPガイドラインなど)の原文と、取引先や当局の要求で確認してください。医薬品工場の実績を公式サイトで確認できる設計施工会社は医薬品工場のクリーンルーム施工会社の比較、再生医療の施設は細胞培養加工施設(CPC)の構造設備基準で扱っています。
GMPグレードA〜Dで行う作業の例
無菌医薬品の工場では、グレードAで無菌充てんや容器の閉そくを行い、グレードBはその周りの作業区域、グレードC・Dは滅菌前の薬液の調製や器具の洗浄に使います。
厚生労働省が参考送付した「無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針」(2011年改訂)と、PIC/S GMPガイドのAnnex 1(2023年8月25日施行)の例示をもとに整理しました(2026年9月24日確認)。
国内の指針は、グレードAの区域を「重要区域」、グレードBを「直接支援区域」、グレードCとDを「その他の支援区域」と呼んでいます。医薬品工場の図面や要求仕様書でこれらの呼び名が出てきたら、同じ区分を指しています。
| グレード | 国内指針での呼び名 | 行う作業の例 | ISOクラス相当(作業時) |
|---|---|---|---|
| グレードA | 重要区域 | 無菌接続や無菌原料の添加など充てん前の無菌作業、無菌充てん、容器の閉そく。Annex 1は充てん装置の無菌組立てや凍結乾燥機への積み込みも例に挙げている | ISO 5 |
| グレードB | 直接支援区域 | グレードAの背景となる区域。グレードA内の運転操作と監視を行う職員の作業区域で、滅菌後の物をグレードAへ搬入・搬出する経路にもなる | ISO 7 |
| グレードC | その他の支援区域 | 滅菌前の薬液の調製。Annex 1はろ過する前の溶液の調製(サンプリング・分注を含む)を例に挙げ、国内指針は秤量と調製をグレードC以上で行うことが望ましいとしている | ISO 8 |
| グレードD | その他の支援区域 | 無菌操作に使う装置・器具の洗浄、洗浄後の部品の取り扱い、滅菌前の部品や器具の組立て | 作業時の値は作業形態に応じて定める |
ISOクラスの相当は、国内指針の表1が作業時の微粒子数に対応させて示しているものです。Annex 1も、グレードDの作業時の基準値はあらかじめ定めず、製造者がリスク評価に基づいて設定するとしています。
最終滅菌する製品は充てんをグレードC以上で
容器に詰めたあとで滅菌する製品(最終滅菌製品)は、無菌操作で作る製品と区分の当て方が変わります。Annex 1は、部材や資材の準備を少なくともグレードD、充てんを少なくともグレードCで行うとしています。充てんに時間がかかる、広口の容器を使うなど環境からの汚染リスクが特に高い場合は、グレードCを背景にしたグレードAで充てんします。軟膏・クリーム・懸濁剤・乳剤の調製は、最終滅菌の前でも少なくともグレードCで行うとしています。
アイソレータの背景はグレードC・D、RABSはグレードB
グレードAをアイソレータやRABS(アクセス制限バリアシステム)で作る場合は、周りの部屋に求められるグレードが変わります。Annex 1は背景の環境を、開放型アイソレータで一般に少なくともグレードC、密閉型アイソレータで少なくともグレードD、無菌操作に使うRABSで少なくともグレードBとしています。アイソレータを採用するかどうかで、周りの部屋をグレードBで建てる前提が変わります。背景のグレードはリスク評価で決め、汚染管理戦略(CCS)で根拠を示すことが求められます。
密閉型グローブボックスを無菌アイソレータとして使う製品の例はグローブボックスのメーカー比較、区域の間で物を受け渡す機器はパスボックスのメーカー比較で紹介しています。
GMP対応のクリーンルームの確認点
設計施工会社の公式サイトには「GMP対応」「HACCP対応」という表現がよく出てきます。この「対応」が何を指すのかは会社によって幅があります。契約前に次の3点を確認してください。
- 設計だけか、文書作成まで含むか——GMPではバリデーション文書(DQ/IQ/OQ/PQ)の作成負担が大きく、ここを誰が担うかで実務の重さが変わります
- 測定と報告書の範囲——何点測って、どの状態で、誰の名前で報告書を出すか
- 査察・監査への対応経験——当局査察や取引先監査の際に説明を求められる資料を用意できるか
これらは公式サイトには書かれていないことが多い項目です。「対応」と書いてあることを確認の起点にして、範囲は面談で詰めてください。
クリーンルームのグレードの測定と記録
規格に「対応」と書いてあっても、測定と記録まで含むかは会社によって違います。引き渡し時に何を測り、どの書式で残すかを先に確認してください。
規格は建てるときだけでなく、運用中も効いてきます。竣工後に継続して必要になるものを整理します。
- 定期的な粒子測定——測定頻度と点数は要求クラスと運用で決めます
- 差圧の記録——連続監視か点検時の記録か。医薬品では連続監視が求められる区域があります
- 温湿度の記録——製品品質に関わる場合は記録の保管期間も決まります
- フィルタのリーク試験——HEPAフィルタの取り付け部からの漏れを確認します
- 清掃・入室の記録——運用側の管理。設備ではなく手順の問題になります
これらを誰が実施するかは、竣工時に決めておく必要があります。自社で測定機器を持つのか、施工会社の保守契約に含めるのか、外部の測定会社に委託するのかで年間費用が変わります。維持管理の実務はHEPAフィルターの交換時期と清浄度測定にまとめています。
クリーンルームのグレードの仕様書
最後に、実務で使える書き方を示します。仕様書に次の5つが揃っていれば、複数社の見積もりが比較できる形になります。
| 書く項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 準拠する規格 | 「JIS B 9920(またはISO14644-1)による」と規格名と番号で書く |
| 要求クラス | 「ISOクラス7」のように規格の体系に合わせて書く。旧クラスで書く場合は併記する |
| 判定する状態 | 「非作業時に判定する」「作業時にも満たすこと」を明記する |
| 測定条件 | 測定点数、測定高さ、測定回数、報告書の様式 |
| その他の環境条件 | 温度・湿度・室圧・換気回数を別項目として書く。クラスとは独立した仕様 |
この5項目を揃えて複数社に渡す手順はクリーンルームの施工手順と見積もりの取り方、会社の比較はクリーンルーム設計施工会社の比較をご覧ください。
クリーンルームのグレードとGMPに関するよくある質問
クリーンルームのグレードについて、ISOクラスとの違い、ISOとJISの使い分け、GMPとISO14644の関係、食品工場での扱い、グレードAで行う作業、最終滅菌する製品の区分など、仕様書を書く前に多い質問に本文の内容をもとに答えます。
クリーンルームのグレードとISOクラスは何が違いますか?
ISOクラスは空気中の粒子数で清浄度を等級に分けた物差しで、業種を問わず使われます。GMPのグレードA〜Dは、医薬品の製造でどの作業をどこで行うかによって区域を分ける区分です。グレードは非作業時と作業時の2状態で評価する点も、クラスの考え方と異なります。医薬品の案件では両方を仕様書に書くことになります。
クリーンルームの規格はISOとJISのどちらに従えばよいですか?
国内の設計・施工ではJIS B 9920が参照されることが多く、海外の親会社や取引先が関わる案件ではISO14644の番号で指定されることが多いという使い分けが見られます。JIS B 9920はISO14644に対応する規格として整備されているため、内容は整合しています。仕様書ではどちらに準拠するかを明記してください。
GMPとISO14644はどちらが優先しますか?
競合するものではなく、重なって適用されます。ISO14644は清浄度の物差しを定め、GMPは製造管理の枠組みとして区域のグレードやバリデーションを求めます。医薬品施設では両方を満たす設計が必要になります。
食品工場でもクリーンルームの規格に従う必要がありますか?
HACCPの運用では清浄度クラスの数値指定が必須になるとは限りません。実務では区域区分と微生物の管理値のほうが重要になります。ただし取引先の監査基準でクラスを求められる場合があるため、要求元の文書を確認してください。
医薬品工場のグレードAではどんな作業をしますか?
グレードAは、滅菌した製品や資材が環境に触れる作業を行う区域で、国内の無菌操作法指針では「重要区域」と呼ばれます。無菌接続や無菌原料の添加、無菌充てん、容器の閉そくなどがここで行われます。グレードBはその背景となる区域、グレードCとDは滅菌前の薬液の調製や器具の洗浄を行う区域です。
「GMPグレード」とは何を指しますか?
文脈によって2つの意味があります。クリーンルームの分野では、医薬品のGMPで製造区域をA〜Dに分ける清浄度の区分を指します。試薬や原材料の分野では、GMPのガイドラインを参照した基準で製造・品質管理された製品の品質区分を「GMPグレード」と表示する例があります。区域の話か原材料の話かを確かめてから読み分けてください。
最終滅菌する医薬品の工場にもグレードAは必要ですか?
PIC/S GMPガイドのAnnex 1では、最終滅菌する製品の充てんは少なくともグレードCで行うとされています。充てんに時間がかかる、広口の容器を使うなど環境からの汚染リスクが特に高い場合は、グレードCを背景にしたグレードAで充てんします。どの工程をどのグレードにするかは、製品と工程のリスク評価で決めます。
この記事を書いた人
執筆・編集:クリーンルームラボ 編集部
クリーンルームの設計施工会社について、対応分野・施工体制・公表実績を公式情報にもとづいてまとめています。
参照した情報:日本産業標準調査会(JISC)JIS検索/公益社団法人 日本空気清浄協会(JACA)/当サイト調べ(掲載12社の公式サイトを2026年8月29日に確認)/厚生労働省 事務連絡「無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針」の改訂について(2011年4月20日・PMDA掲載、2026年9月24日確認)/European Commission「EU GMP Annex 1: Manufacture of Sterile Medicinal Products」(2022年8月22日、2026年9月24日確認)/PIC/S「Entry into force of revised GMP Annex 1」(2026年9月24日確認)/タカラバイオ「mRNA製造用酵素の品質グレードとは?(RUO/HQ/GMP)」(2026年9月24日確認)(2026年8月29日確認)
最終更新:2026年9月24日
