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異物混入対策は何から見直す?
食品工場の防止の原則と虫・毛髪を施設で防ぐ方法

最終更新:2026年9月14日

異物混入対策は何から見直す? 食品工場の防止の原則と虫・毛髪を施設で防ぐ方法設計・設備異物混入対策は何から見直す?食品工場の防止の原則と虫・毛髪を施設で防ぐ方法

異物混入対策は、持ち込まない・発生させない・取り除くの3原則を、人の運用と施設の両方で支えるのが基本です。東京都の令和6年度の苦情統計では、異物混入を要因とする苦情が505件あり、要因別の合計の11%を占めました。

ルールの徹底や教育だけでは、同じ異物が繰り返し見つかることがあります。虫が入り込む隙間、毛髪を落としやすい更衣の動線、汚れた区域と清潔な区域が同じ空気でつながった間取りは、運用では直せないからです。

この記事では、異物の種類ごとの対策の違い、虫と毛髪を施設で防ぐ方法、区域分けと検査機器の選び方、HACCPとリコール届出で求められることまでを、食品工場の発注担当者向けに整理します。

目次
  1. 異物混入対策は異物の種類で分けて考える
  2. 異物混入の苦情は東京都で年505件
  3. 異物混入防止の3原則と設備の役割
  4. 異物混入の虫対策は侵入経路をふさぐ
  5. 異物混入の毛髪対策は更衣と動線で決まる
  6. 異物混入の硬質異物は設備点検で防ぐ
  7. 異物混入の軟質異物と原材料の対策
  8. 異物混入対策は改修工事中も崩れる
  9. 異物混入対策を続ける教育と記録
  10. 食品工場の異物混入対策は区域分けから
  11. 異物混入を見逃さない検査機器の選び方
  12. 異物混入対策で法令が求める衛生管理
  13. 異物混入が起きたときの届出と原因調査
  14. 異物混入対策を施設から見直す手順
  15. 異物混入対策に関するよくある質問

異物混入対策は異物の種類で分けて考える

異物混入対策は、虫、毛髪、硬質異物、軟質異物、原材料由来の5種類に分けて考えると打ち手が決まります。種類ごとに混入の経路が違い、効く対策も施設・人・検査機器のどれかに偏るからです。

異物混入とは、製造・加工・保管などの工程で、本来その食品に含まれるべきでない物が入り込むことです。原因をひとまとめに「異物」と扱うと、検査機器を増やすか、教育を増やすかの二択になりがちです。まずは過去の苦情や社内の不良記録を、次の表の種類で数え直してください。

異物の種類と主な混入源・効く対策
種類例主な混入源効く対策
虫飛来する虫、歩き回る虫、工場内で発生する虫出入口、窓、排水溝、壁や配管の隙間、原材料の梱包施設(侵入経路をふさぐ・発生源をなくす)
毛髪・体毛髪の毛、まつ毛、体毛作業者人の運用と施設(更衣・動線・入室前の除去)
硬質異物金属片、ガラス片、硬いプラスチック片設備の摩耗や破損、器具の欠け検査機器と設備の点検
軟質異物ビニール片、紙片、糸くず、手袋の破片梱包材、作業者の装備持ち込み制限と人の運用
原材料由来骨、皮、種、石、砂原材料そのもの受入検査、選別、ふるい

表の右端を見ると、虫と毛髪は施設の関与が大きく、硬質異物は検査機器、原材料由来は受入時の選別が中心になると分かります。同じ「異物混入対策」でも、発注すべきものが工事なのか機器なのか運用の見直しなのかは、異物の種類で変わります。

数え直すと、多くの工場で上位の2〜3種類に件数が集中しているはずです。すべての種類に同時に手を打つより、件数の多い種類から順に、その種類に効く対策へ予算を振るほうが効果を確かめやすくなります。

異物混入の苦情は東京都で年505件

東京都の令和6年度の苦情統計では、異物混入を要因とする苦情は505件で、要因別の合計4,597件の11%でした。有症苦情、施設・設備、食品・器具の取扱いに次ぐ規模で、食品の苦情の主要な要因の1つです。

東京都 令和6年度 要因別苦情件数(上位)
要因件数構成比
有症1,807件39.3%
施設・設備585件12.7%
食品・器具の取扱い552件12%
異物混入505件11%
その他428件9.3%
表示193件4.2%
従事者175件3.8%
異味・異臭173件3.8%
合計4,597件100%

出典:東京都保健医療局「食品の苦情統計」の令和6年度 要因別苦情件数(2026年9月11日確認)。苦情要因が複数ある事例はそれぞれの項目に計上されているため、要因別の合計は期別に集計した苦情件数4,373件より多くなります。構成比は四捨五入のため合計と一致しない場合があります。

この数字は、都内の保健所などに寄せられた消費者からの苦情を集計したものです。工場の中で見つかって出荷前に止めた異物は含まれません。苦情として外に出た異物の裏には、社内で見つけて除いた異物があると考えるのが自然で、自社の不良記録と合わせて見ると実態に近づきます。

注目したいのは、異物混入と並んで「施設・設備」が要因の上位にある点です。異物の多くは、建物や設備の状態と切り離せません。虫の侵入経路や、汚れた区域との空気のつながりは、施設側で直すしかない要因です。

異物混入防止の3原則と設備の役割

異物混入防止の3原則は、持ち込まない、発生させない、取り除くです。どの原則も人の運用だけでは崩れやすく、設備で支えると守りやすくなります。原則ごとに、運用と設備の両面で何をするかを整理します。

異物混入防止の3原則と、運用・設備の対策
原則人の運用施設・設備
持ち込まない私物の持ち込み制限、粘着ローラー掛け、原材料の開梱ルール更衣室と前室、エアシャワー、荷受場での詰め替えスペース、出入口の二重化
発生させない器具の点検、清掃、整理整頓剥がれにくい床や壁、結露しにくい天井、清掃しやすい設備配置、排水溝の構造
取り除く目視検査、清掃、記録金属検出機、X線検査装置、ふるい、マグネット

運用の対策は、担当者が変わったり繁忙期に手順が省かれたりすると効果が落ちます。設備の対策は一度入れれば人に左右されにくい一方で、初期費用がかかり、後から直すのが大変です。運用で守れる部分は運用で、繰り返し破られる部分は設備でという分け方が、費用と効果のつり合いを取りやすい考え方です。

3原則の中で最も優先したいのは「持ち込まない」です。取り除く対策は、入ってしまった異物を後から見つける仕組みなので、見つけられない種類の異物には効きません。後で触れるとおり、毛髪や虫は検査機器で見つけにくい異物の代表です。

「発生させない」は見落とされやすい原則です。塗装が剥がれた床、錆びた配管、結露した天井から落ちる水滴やカビは、工場そのものが異物の発生源になっている状態です。建物の劣化は教育では止まらないため、改修の計画に組み込む必要があります。

異物混入の虫対策は侵入経路をふさぐ

異物混入の虫対策は、虫がどこから入り、どこで増えているかを特定し、その経路を施設側でふさぐことが中心です。駆除や捕虫器は必要ですが、侵入経路が開いたままでは効果が続きません。

工場の虫は、大きく外から入ってくる虫と、工場の中で発生する虫に分かれます。外から入る虫には、光に誘われて飛んでくるものと、床や壁の隙間を歩いて入るものがあります。工場の中では、排水溝の汚れや、湿気の多い場所のカビを餌にして増える虫が問題になります。経路ごとの対策は次のとおりです。

虫の侵入経路・発生源と施設側の対策
経路・発生源起きること施設側の対策
出入口・シャッター開閉のたびに飛来する虫が入る前室や二重扉、開放時間の短い扉、室内を周囲より高い気圧に保つ
窓・換気口開けた窓や網のない換気口から入る原則として開放しない、網や給気フィルタを付ける
壁・配管の隙間歩き回る虫が入り込む配管の貫通部や壁の継ぎ目をふさぐ
排水溝汚れやぬめりで虫が発生する清掃しやすい構造、固形物が流れ込まない仕組み、破損の補修
湿気・カビカビを餌にする虫が増える結露を防ぐ空調と断熱、湿気がこもらない換気
原材料・段ボール梱包に付いた虫や卵を持ち込む荷受場で容器に詰め替え、段ボールを製造区域に入れない
照明夜間の光に飛来する虫が集まる出入口付近の照明の位置と種類の見直し、捕虫器の配置

出入口の対策で効くのが、室内の気圧を周囲よりわずかに高く保つ方法です。扉を開けたときに、室内の空気が外へ向かって流れるため、外の空気と一緒に虫が入り込みにくくなります。ただし給気と排気の量をそろえる空調の設計が要り、扉の開けっ放しが続けば効果は落ちます。室圧の考え方はクリーンルームの換気回数と差圧で解説しています。

段ボールは虫の持ち込みで特に注意したい資材です。紙の隙間は虫が隠れやすく、製造区域の中で開けると、そこが持ち込みの入口になります。荷受場で原材料をプラスチックの容器に詰め替え、段ボールは製造区域に入れない運用にすると、侵入経路を1つ減らせます。詰め替えの場所を確保できるかは間取りの問題なので、改修時に広さを見込んでおいてください。

駆除作業にも法令上の基準があります。一般的な衛生管理の基準では、ねずみと昆虫の駆除作業を年2回以上行い記録を1年間保存するか、発生場所や侵入経路を定期に調査して必要な措置を講じる方法が示されています。詳しくは後の「法令が求める衛生管理」で整理します。

異物混入の毛髪対策は更衣と動線で決まる

異物混入の毛髪対策は、髪の毛を製造区域に持ち込まない仕組みを、更衣室から作業場までの動線に組み込むことで決まります。帽子やネットの着用だけでなく、着替える順番と入室前の除去までを設計します。

毛髪は作業者から自然に抜け落ちるため、完全に止めることはできません。現実的な目標は、抜けた毛髪を作業場に入る前に落とし、作業中は帽子の中に留めることです。そのためには、人がどの順番でどこを通るかを決め、その順番どおりにしか動けない間取りにしておく必要があります。

毛髪の持ち込みを防ぐ工程別の対策
工程人の運用施設・設備
出勤・私服私服と作業着を分ける、私物を持ち込まない私服用と作業着用のロッカーを分ける
更衣帽子やネットを先にかぶってから作業着を着る鏡と着衣の手順表示、一方通行の更衣室
入室前粘着ローラーで全身を掛ける、相互に確認する前室、エアシャワー、手洗い設備
作業中決まった時間に粘着ローラーを掛け直す作業場内のローラー置き場、休憩室への動線の分離
休憩・再入室再入室のたびに入室前の手順をやり直す休憩後も前室を通らないと作業場に戻れない配置

施設の側で差がつくのは、更衣室から作業場までの動線です。休憩室やトイレから、前室を通らずに作業場へ戻れる間取りになっていると、どれだけ教育しても手順が省かれる余地が残ります。改修や新設のときに、動線を一方通行にできるかを最初に検討してください。

エアシャワーは、入室前に作業着の表面に付いた毛髪やほこりを吹き飛ばす設備です。便利な設備ですが、付着物をすべて落とせるわけではないため、粘着ローラーと組み合わせて使うのが一般的です。仕組みと価格の考え方はエアシャワーの解説、入室の手順はクリーンルームの入室手順にまとめています。

異物混入の硬質異物は設備点検で防ぐ

硬質異物の混入は、設備や器具が欠けたり外れたりしたときに起きます。検査機器で見つける前に、欠けや緩みを始業前と終業後の点検で見つけるのが基本です。

金属片やガラス片は、口の中を傷つけるおそれがある異物です。多くは工場の中の設備や器具から出ます。刃物の欠け、ふるいの網の破れ、ボルトの脱落などが典型です。検査機器は、入ってしまった異物を見つける仕組みです。欠けたこと自体に早く気づけば、疑わしい製品を絞り込んで出荷前に止められます。

硬質異物を防ぐ設備・器具の点検項目の例
点検の対象見るポイント点検のタイミングの例
刃物・スライサー刃の欠け、刃こぼれ始業前と終業後、刃の交換時
ふるい・網破れ、ほつれ、枠の変形始業前と終業後
ボルト・ナット・ピン緩み、脱落、本数の不足始業前、分解清掃の後
ガラス・硬質プラスチックの器具ひび、欠け使用前、落としたとき
照明器具カバーの割れ、破片が落ちない構造か定期点検

点検は、始業前と終業後の状態を比べる考え方で行います。終業後に欠けが見つかれば、その日の製品のどこまでを疑うかを決められます。始業前だけの点検では、欠けた時刻の幅が広がり、確かめる製品も増えます。

施設の側でできることもあります。製品の上に照明がある場所では、割れても破片が落ちにくいカバー付きの器具を選びます。ガラス製の器具は、代わりの材質があれば置き換えます。製造区域に持ち込むガラスや硬質プラスチックの製品を一覧にして、数を管理する方法もあります。

設備を新しく入れるときは、分解清掃のしやすさも確かめてください。部品が多く、組み立て直しの手順が複雑な設備ほど、ボルトやピンの付け忘れが起きやすくなります。発注時に、工具なしで外せる部品の範囲と、脱落を防ぐ仕組みを聞いておくと比べやすくなります。

異物混入の軟質異物と原材料の対策

軟質異物と原材料由来の異物は、持ち込みの制限と受入時の選別が中心です。ビニール片や紙片は検査機器で見つけにくいため、製造区域に入れる物を減らすことが最も効きます。

軟質異物の多くは、梱包材と作業者の装備から出ます。ビニール袋の切れ端、段ボールの紙片、手袋の破片、マスクのひもなどです。どれも軽くて小さく、製品に紛れると見分けにくい異物です。

  • 梱包材は荷受場で外す——製造区域に入れる前に、原材料を専用の容器へ移し替えます
  • 開封の方法を決める——袋を手で破らず、決まった位置をはさみで切ると切れ端が出にくくなります。はさみの数と置き場も決めます
  • 装備の色を製品と分ける——手袋やシール材に製品と違う目立つ色を選ぶと、破片に気づきやすくなります
  • 文具を持ち込まない——ボールペンのキャップやクリップも異物になります。記録用の筆記具は数と置き場を決めます

原材料由来の異物は、骨や種、石などです。原材料そのものに含まれているため、工場の中で発生を止めることはできません。受け入れた段階で取り除くのが基本です。

原材料由来の異物を減らす段階ごとの対策
段階やること
仕入れ先の選定異物の管理方法や検査の内容を、仕入れ先に確かめる
受入時包装の破れや汚れ、目に見える異物がないかを確かめる
下処理選別と洗浄を行い、ふるいやマグネットを通す
記録見つかった異物を、仕入れ先ごと・ロットごとに残す

受入検査の場所は、製造区域と分けておきます。原材料の段ボールを開けて中身を確かめる作業は、それ自体が異物や虫を持ち込むきっかけになるからです。確認を終えた原材料だけを容器に移し、製造区域へ入れる流れにします。

異物混入対策は改修工事中も崩れる

工場の改修工事の最中は、工事で出る粉じんや部材の切れ端が、新しい異物の発生源になります。稼働を続けながら工事をするなら、工事区域と製造区域を分ける計画を、施工会社に最初から出させてください。

区域分けや前室を作る工事は、異物混入対策のための工事です。それでも工事そのものが異物のリスクになります。壁や天井を削れば粉じんが出ます。ビスや配線の被覆、断熱材の切れ端も出ます。外から来る作業者と資材は、日々の入室手順の外側にいます。

改修工事中の異物リスクと対策の例
工事中のリスク対策の例
粉じんの飛散工事区域をシートや仮設の壁で囲い、製造区域より低い気圧に保つ
部材の切れ端・ビス工事区域の出口で清掃し、持ち出す物を確かめる
作業者と資材の出入り製造区域を通らない搬入経路と、工事専用の出入口を決める
空調の停止・切り替え室圧が崩れる時間帯と、その間の製造を止めるかを決める
工事後の立ち上げ清掃し、清浄さや虫の状況を確かめてから製造を再開する

見積もりを比べるときは、この仮設の計画が含まれているかを確かめてください。仮設の区画や工事後の清掃が見積もりに入っていないと、稼働中の工場では追加の費用や工期の延長につながりやすくなります。休日や長期休暇にまとめて工事をするのか、稼働しながら区画を分けて進めるのかで、計画も費用も変わります。

工事後は、清掃のあとに状態を確かめてから製造を再開します。清浄な空気を送る設備を入れた区域なら、引き渡しの前に清浄度を測った結果を出してもらう取り決めにしておくと安心です。清掃の進め方と記録はクリーンルームの清掃で解説しています。

異物混入対策を続ける教育と記録

異物混入対策を続けるには、手順の理由を伝える教育と、見つかった異物を残す記録の2つが要ります。設備を入れても、使い方が守られず記録も残らなければ、効果を確かめられません。

教育では、手順だけでなく理由を伝えます。「粘着ローラーを掛ける」だけでなく、「髪の毛は検査機器で見つけにくいから、入る前に落とす」と伝えます。理由が分かっていれば、忙しいときにも手順が省かれにくくなります。

  • 新しく入った人——入室手順と区域のルールを、実際の動線を歩きながら教えます
  • 外から来る人——点検業者や工事の作業者にも、入室の手順を事前に伝えます
  • 全員——異物が見つかったときは事例を共有し、手順を見直します

記録は、異物が見つかったときの記録と、日々の点検の記録に分かれます。見つかった異物は、日時・場所・工程・種類・大きさを残します。同じ書式で数か月分がたまると、どの工程のどの種類が多いかが見えてきます。

異物混入対策で残す記録の例
記録の種類残す項目の例使い道
異物の発見記録日時、場所、工程、種類、大きさ、写真多い種類と工程を特定する
設備の点検記録点検日、担当者、欠けや緩みの有無硬質異物の原因を絞り込む
防虫の記録捕虫器の場所ごとの数、駆除や調査の実施日侵入経路を推定する、法令の記録にする
清掃の記録実施日、場所、担当者汚れや虫の発生源を確かめる

防虫の記録は、法令の基準にも関わります。捕虫器ごとの数を場所別に残すと、数が増えた場所から侵入経路を推定できます。整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5Sも、記録と組み合わせると続けやすくなります。

記録は、施設の改修を判断する根拠にもなります。同じ場所で同じ異物が続いていれば、運用ではなく施設に原因があると考える材料になります。改修の相談をするときは、この記録を施工会社に見せると、原因に合った提案を受けやすくなります。

食品工場の異物混入対策は区域分けから

食品工場の異物混入対策は、汚れの度合いで作業区域を分け、汚れた区域から清潔な区域へ人・物・空気が逆流しない間取りにすることが土台になります。区域の境目に設備を置くと、対策の効果が安定します。

原材料を受け入れる場所と、加熱後の製品を包装する場所では、求められる清潔さがまったく違います。同じ空間で作業していると、原材料に付いてきた虫や汚れが、そのまま製品の近くまで運ばれてしまいます。区域を分け、境目で人と物と空気の流れを管理するのが基本です。

食品工場の区域分けの例と境目の設備
区域の例主な作業求める清潔さ境目に置く設備の例
受入・保管荷受け、検収、原材料の保管外からの持ち込みを止める詰め替えスペース、出入口の二重化
下処理・加工洗浄、切断、加熱発生させない手洗い設備、区域専用の器具置き場
加熱後・包装冷却、盛り付け、包装工場内で最も清潔に保つ前室、室圧の差、局所的に清浄な空気を送る設備

空気の流れも区域分けの一部です。最も清潔に保ちたい包装などの区域の気圧を一番高くし、汚れた区域へ向かって空気が流れるようにすると、扉を開けたときに汚れた空気が入り込みにくくなります。区域ごとに空調の系統を分けるかどうかは、費用に大きく効く判断です。

建材の選び方も異物の発生に関わります。塗装が剥がれやすい床や、継ぎ目の多い壁は、それ自体が異物の発生源になり、汚れが溜まって虫の住みかにもなります。清掃しやすく剥がれにくい床材と壁材の選び方はクリーンルームの床材で扱っています。

包装工程など、製品が露出する範囲が限られている場合は、部屋全体ではなく作業点だけを囲って清浄な空気を送る方法もあります。部屋ごと作り替えるより費用を抑えやすく、既存の工場の中でも導入できます。考え方と価格はクリーンブースとは、部屋全体の費用はクリーンルームの費用で比べられます。

異物混入を見逃さない検査機器の選び方

異物混入の検査機器は、見つけられる異物と見つけられない異物がはっきり分かれます。自社で多い異物の種類に合った方式を選ばないと、機器を入れても苦情は減りません。一般的な得意・不得意は次のとおりです。

異物検査の方式ごとの得意・不得意
方式見つけやすい異物見つけにくい異物
金属検出機金属片ガラス、樹脂、毛髪、虫など金属以外
X線検査装置金属、ガラス、石、骨など密度の高い異物毛髪、虫、薄い樹脂など密度の低い異物
カメラ・目視検査表面にある異物、色や形の違う異物製品の内部に埋まった異物
ふるい・マグネット粉体や液体の原材料に混じった大きな異物、鉄片目の細かさより小さい異物、磁石に付かない異物

上表は方式ごとの一般的な傾向です。検出できる大きさや材質は、製品の形状・水分・包装材によって大きく変わるため、実際の性能は機器メーカーに自社製品での試験を依頼して確認してください。

表から分かるとおり、毛髪と虫は、どの検査方式でも見つけにくい異物です。硬質異物が多い工場なら検査機器の追加が効きますが、毛髪や虫が多い工場では、機器を増やしても効果は限られます。こうした異物は、前の章までで扱った「持ち込まない」「発生させない」の対策で減らすのが筋です。

検査機器を導入するときは、置く場所も検討してください。原材料の段階で取り除くのか、包装の直前で見つけるのかで、選ぶ方式も台数も変わります。包装の直前に置く場合は、検出後に製品を確実に取り除く排除装置と、検出の記録をセットで考えます。

異物混入対策で法令が求める衛生管理

食品衛生法では、令和3年6月1日から、原則すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められています。具体的な基準は食品衛生法施行規則の別表第17(一般的な衛生管理)と別表第18(HACCPに沿った衛生管理)に定められています。

HACCPに沿った衛生管理には、「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の2種類があり、事業の規模や業種によってどちらを行うかが分かれます。どちらの場合も、施設の衛生管理やねずみ・昆虫の対策といった一般的な衛生管理が土台になります。別表第17のうち、異物混入と関わりの深い項目は次のとおりです。

一般的な衛生管理の基準のうち異物混入に関わる項目
項目基準の内容(要約)
窓・出入口原則として開放したままにしない。開放したままにする場合は、じん埃、ねずみ、昆虫等の侵入を防止する措置を講ずる
排水溝固形物の流入を防ぎ、排水が適切に行われるよう清掃し、破損した場合は速やかに補修する
ねずみ・昆虫の駆除1年に2回以上駆除作業を実施し、その記録を1年間保存する
調査にもとづく方法発生場所・生息場所・侵入経路・被害状況を定期に統一的に調査し、結果にもとづき必要な措置を講ずる等により目的を達成できる方法であれば、施設の状況に応じた方法と頻度で実施できる

出典:千葉県「一般的な衛生管理(営業者が実施すべき公衆衛生上必要な措置の基準)」(2024年8月5日更新)、東京都保健医療局「公衆衛生上必要な措置の基準について」、東京都保健医療局「HACCPに沿った衛生管理の制度化」(いずれも2026年9月11日確認)。

基準は「窓を開けたままにしない」「侵入を防止する措置を講ずる」といった書き方で、扉の構造や空調の仕様までは決めていません。どの設備で基準を満たすかは事業者が決めることになるため、改修や新設の仕様書には、基準のどの項目にどの設備で対応するかを書いておくと、保健所への説明にも使えます。

東京都は、令和6年9月1日から機能性表示食品の届出者と特定保健用食品の許可取得者も、公衆衛生上必要な措置の基準の対象になったと案内しています。自社がどの基準の対象になるかは、所管の保健所で確認してください。

異物混入が起きたときの届出と原因調査

異物混入が起きたときは、現物を保全して原因を調べ、必要に応じて保健所に相談し、自主回収を行う場合は行政へ届け出るのが基本の流れです。令和3年6月1日から、自主回収(リコール)の情報を行政に届け出ることが義務になっています。

異物混入が起きたときの対応の流れ
段階やること
1. 現物の保全異物と製品を、見つかった状態のまま保管する。洗ったり捨てたりしない
2. 異物の特定材質や種類を調べる。社内で判別できない場合は分析機関に依頼する
3. 経路の特定製造記録と照らし、どの工程で入ったかを絞り込む
4. 相談・届出健康被害のおそれがある場合は保健所に相談する。自主回収を行う場合はリコール情報を届け出る
5. 再発防止運用の見直しで足りるか、施設や設備の改修が要るかを判断する

東京都の案内では、流通段階で判明した異物混入や硬質異物など、健康被害をもたらす可能性のある食品がリコール情報の届出対象に含まれています(2026年9月11日確認)。届出の要否や方法は、東京都保健医療局「食品等のリコール情報届出制度」と所管の保健所で確認してください。

再発防止の段階で見落とされがちなのが、施設の問題として扱うかどうかの判断です。同じ種類の異物が、手順を見直したあとも繰り返し見つかる場合は、運用ではなく施設に原因があると考えたほうが早く解決します。虫なら侵入経路、毛髪なら動線、硬質異物なら設備の摩耗という具合に、種類ごとに見るべき場所が決まっています。

異物混入対策を施設から見直す手順

異物混入対策を施設から見直すときは、記録の集計、現場の確認、運用と設備の切り分け、仕様書づくり、施工会社への相談の順に進めると、必要な工事だけに予算を絞れます。

  1. 記録を種類別に集計する——過去の苦情と社内の不良記録を、虫・毛髪・硬質・軟質・原材料由来に分けて数えます
  2. 現場で経路を確認する——件数の多い種類について、侵入経路や発生源を現場で確かめます。虫なら出入口・排水溝・隙間、毛髪なら更衣と動線を見ます
  3. 運用と設備を切り分ける——手順の見直しで止まるものと、施設を直さないと止まらないものを分けます
  4. 設備の要件を仕様書に書く——区域分け、室圧の差、前室やエアシャワーの有無、床と壁の仕上げなど、求める状態を言葉と数値で書きます
  5. 複数の施工会社に相談する——同じ仕様書で提案を取り、対策の考え方と費用を比べます

施設の対策には、区域分けや室圧の管理といった空調の設計が関わります。こうした設計を得意とするのが、クリーンルームの設計施工会社です。食品工場向けの実績があるかは、公式サイトの施工事例で確認できます。相談から引き渡しまでの流れはクリーンルームの施工手順にまとめています。

当サイトでは、食品工場のクリーンルームに対応する設計施工会社を食品工場のクリーンルームの比較ページで公表情報つきで並べています。用途を問わず全体から探す場合はクリーンルーム設計施工会社の比較ページから、対応範囲と実績で絞り込んでください。

参照:東京都保健医療局「食品の苦情統計」/東京都保健医療局「公衆衛生上必要な措置の基準について」/千葉県「一般的な衛生管理」/東京都保健医療局「食品等のリコール情報届出制度」(いずれも2026年9月11日確認)

異物混入対策に関するよくある質問

異物混入対策について、何から始めるか、防止の3原則、毛髪や虫を金属検出機やX線で見つけられるか、虫対策で法令が求めること、自主回収時の届出の要否に、本文の内容をもとに答えます。

異物混入対策は何から始めればよいですか?

過去の苦情と社内の不良記録を、虫・毛髪・硬質異物・軟質異物・原材料由来の種類別に数え直すことから始めます。件数の多い種類から順に、その種類に効く対策へ予算を振ると効果を確かめやすくなります。虫と毛髪は施設、硬質異物は検査機器、原材料由来は受入時の選別が中心です。

異物混入防止の3原則とは何ですか?

持ち込まない、発生させない、取り除くの3つです。どの原則も人の運用だけでは崩れやすいため、更衣室や前室、剥がれにくい床や壁、金属検出機などの設備で支えると守りやすくなります。最も優先したいのは持ち込まないことです。

毛髪や虫は金属検出機やX線で見つけられますか?

一般に見つけにくい異物です。金属検出機は金属以外に反応せず、X線検査装置も毛髪や虫のように密度の低い異物は苦手とされます。毛髪と虫は、更衣と動線の設計や侵入経路の封鎖といった、持ち込まない対策で減らすのが基本です。

異物混入の虫対策で法令が求めていることはありますか?

一般的な衛生管理の基準では、窓や出入口を原則として開放したままにしないこと、ねずみと昆虫の駆除作業を1年に2回以上実施して記録を1年間保存すること、または定期の調査にもとづく方法で行うことなどが示されています。どの設備で基準を満たすかは事業者が決めます。

異物混入で自主回収するときは届出が必要ですか?

令和3年6月1日から、自主回収(リコール)を行う場合はリコール情報を行政に届け出ることが義務になっています。東京都の案内では、硬質異物など健康被害をもたらす可能性のある食品が届出の対象に含まれています。届出の要否と方法は所管の保健所で確認してください。

この記事を書いた人

執筆・編集:クリーンルームラボ 編集部

クリーンルームの設計施工会社について、対応分野・施工体制・公表実績を公式情報にもとづいてまとめています。

参照した情報:東京都保健医療局「食品の苦情統計」(令和6年度 要因別苦情件数)/東京都保健医療局「公衆衛生上必要な措置の基準について」/千葉県「一般的な衛生管理(営業者が実施すべき公衆衛生上必要な措置の基準)」/東京都保健医療局「HACCPに沿った衛生管理の制度化」/東京都保健医療局「食品等のリコール情報届出制度」(2026年8月29日確認)

最終更新:2026年9月14日