クリーンルームの内装で、いちばん先に傷むのは床です。歩行と台車の荷重を毎日受け、洗浄剤や消毒剤がかかり、それでも発塵してはならないという条件が重なる部位で、材料を間違えると数年で表面が荒れて発塵源に変わります。
この記事では、床材の4種類をどう使い分けるかを起点に、壁パネル・天井の選定基準と、内装の見積もりで金額が変わる要因までを整理します。内装は設備と違って後から差し替えにくく、しかも清掃の手間として毎日効いてきます。
目次
クリーンルームの床材は用途で使い分ける
クリーンルームの床材とは、発塵せず、清掃と薬品に耐え、台車や装置の荷重を受けられる床仕上げのことです。塗り床・シート系・グレーチング・フリーアクセス床の4種類があり、工程の内容で選ぶものが変わります(2026年8月30日時点)。
床は、歩行・台車・清掃という物理的な負荷を毎日受ける部位です。用途で選び方が変わります。
| 床の種類 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 塗り床(樹脂系) | 継ぎ目がなく清掃しやすい。厚みや配合で耐薬品・帯電防止を選べる | 医薬品、食品、一般の製造室 |
| シート系 | 施工が早い。溶接処理で継ぎ目を塞ぐ | 改修工事、工期の制約がある場合 |
| グレーチング(通気性のある床) | 床下へ空気を抜く。一方向流に必須 | 半導体の前工程など一方向流の部屋 |
| フリーアクセス床 | 配線・配管を床下に通せる | 装置の入れ替えが多い研究施設 |
種類を絞ったら、次の4点で仕様を確定します。この4点が見積書に書かれていない床工事は、他社と比較できません。
- 帯電防止が要るか——電子部品を扱う工程では導電性能と接地の方法まで指定します
- どの薬品がかかるか——使用する洗浄剤・消毒剤の一覧を渡し、その薬品に耐える配合を選びます
- 耐荷重——台車の車輪、装置の脚、フォークリフトの有無で必要な厚みが変わります
- 床勾配と排水——水を使う工程では勾配と排水溝の形状が決め手になります
食品工場のように水で洗う工程がある場合は、水が残る床は菌の温床になるため、乾きやすい設計が求められます。用途ごとの考え方は食品工場のクリーンルームで解説しています。グレーチングを使う一方向流の部屋についてはクリーンルームの空調の仕組みもあわせてご覧ください。
クリーンルームの内装材に求められる3つの条件
一般の内装材との違いはここにあります。発塵しないこと、清掃・薬品に耐えること、目地から発塵しないこと。この3つが満たされないと清浄度を保てません。
クリーンルームのパネルとは、発塵しにくく清掃しやすい表面で室内を囲うための壁材・天井材のことです。一般的な内装材との違いは、表面の性状と目地の処理にあります。求められる条件から確認します(2026年8月29日時点)。
このパネルは、一般の間仕切りとは選定基準が違います。
| 条件 | 内容 | 満たさないとどうなるか |
|---|---|---|
| 発塵しない | 表面から粒子が出ない。摩耗・剥離しない仕上げ | 室内に恒常的な発塵源ができ、換気回数を上げても清浄度が安定しない |
| 清掃しやすい | 平滑で継ぎ目が少なく、拭き取りやすい | 清掃時間が増える。継ぎ目に汚れと菌が残る |
| 薬品に耐える | 使用する洗浄剤・消毒剤で変色・劣化しない | 数年で表面が荒れ、発塵源に変わる |
加えて、用途によっては静電気対策(帯電防止)や耐薬品性の等級、不燃・準不燃の性能が要求されます。医薬品や食品では、消毒剤に耐えることが選定の決め手になります。
材料の選定は、設計施工会社の標準仕様で決まってしまうことがあります。使用する洗浄剤・消毒剤の一覧を先に渡してください。後から消毒剤を変えると内装が持たない、という事態を避けられます。
クリーンルームの壁パネルは構造と厚みで決まる
壁パネルは、表面材と芯材を組み合わせたサンドイッチ構造が一般的です。厚みは断熱・遮音・強度の要求で決まり、厚くなるほど有効な室内寸法が減ります。
- 表面材——鋼板系(塗装鋼板・ステンレス)、樹脂系など。耐薬品性と清掃性で選びます
- 芯材——断熱性と不燃性能に関わります。冷蔵・冷凍帯では断熱性能が重要になります
- 厚み——薄いほど室内が広く使えますが、断熱・遮音・強度は落ちます
- 接合部——継ぎ目のシール方法。ここが清掃性と気密性を左右します
- 入隅・出隅の納まり——R形状にすると清掃しやすくなります。医薬品・食品で採用されます
パネルの価格は表面材・芯材・厚み・仕上げの組み合わせで変わります。見積もりでは「パネル一式」ではなく、仕様(表面材、芯材、厚み、接合方法)を明記してもらってください。同じ面積でも仕様が違えば金額は比較できません。
クリーンルームの天井はフィルタの納まりで決まる
天井はパネルを張るだけの部位ではありません。フィルタユニット、照明、スプリンクラー、ダクトがすべて集まる場所で、設計上の制約が最も厳しい部分です。
| 論点 | 確認すること |
|---|---|
| フィルタの配置 | 全面配置(一方向流)か部分配置(非一方向流)か。配置密度が清浄度と費用を決める |
| 交換方法 | 天井裏から交換するか室内側から交換するか。室内側なら生産を止める必要がある |
| 天井内の高さ | ダクトとフィルタユニットが納まる高さがあるか。既存建屋の改修では最大の制約になる |
| 気密性 | 天井面からの漏気は差圧を崩す。点検口のシールが弱点になりやすい |
| 照明 | 埋め込みにするか天井面に付けるか。段差は埃がたまる |
既存建屋の改修では、天井内の高さが足りずに計画が変わることが最も多く起きます。現地調査で天井内の実寸を測ってもらってください。
内装の見積もりで金額が変わる6つの要因
内装の見積もりを比較するときは、次の項目が揃っているかを確認してください。金額差の理由はほぼここにあります。
- 表面材の種類——ステンレスと塗装鋼板では単価が違います
- 厚みと芯材——断熱性能と不燃性能の要求で変わります
- R納まりの有無——入隅・出隅をR形状にすると加工費が増えます
- 開口部の数——扉、窓、パスボックス、点検口の数だけ加工が発生します
- 既存壁の解体・処分——改修では撤去費が別途かかります
- 床の下地処理——既存床の状態次第で下地補修が必要になります
内装材のメーカーと設計施工会社は別であることが多く、「どのメーカーのどの製品を使うか」を見積書に書いてもらうと比較しやすくなります。会社ごとの対応範囲はクリーンルーム設計施工会社の比較で確認できます。
クリーンルームの床材・パネルに関するよくある質問
クリーンルームの床材とパネルについて、塗り床とシート系の選び方、帯電防止の要否、一般の間仕切りとの違い、壁パネルの厚みの決め方など、内装の仕様を決める前に多い質問に本文の内容をもとに答えます。
クリーンルームの床材は塗り床とシートのどちらがよいですか?
工期と用途で選びます。塗り床は継ぎ目がなく清掃しやすい一方、養生と乾燥に日数がかかります。シート系は施工が早いため、停止期間が限られる改修工事で選ばれることがあります。水を使う工程では、種類よりも床勾配と排水溝の形状のほうが重要になります。
クリーンルームの床材に帯電防止は必ず必要ですか?
工程によります。電子部品や半導体を扱う工程では静電気が製品不良に直結するため、導電性能と接地の方法まで指定します。一方、医薬品や食品では耐薬品性と清掃性のほうが優先されることが多く、必要な性能は工程から決めてください。
クリーンルームのパネルは普通の間仕切りと何が違いますか?
発塵しないこと、清掃しやすいこと、使用する薬品に耐えることが求められる点が違います。一般の間仕切りは表面が摩耗して粒子を出すため、室内に恒常的な発塵源ができてしまい、空調を強化しても清浄度が安定しません。
クリーンルームの壁パネルの厚みはどう決めますか?
断熱・遮音・強度の要求から決まります。冷蔵・冷凍帯の作業室では断熱性能が重要になり、厚みが必要です。ただし厚くするほど有効な室内寸法が減るため、必要な性能の根拠を確認したうえで決めてください。
この記事を書いた人
執筆・編集:クリーンルームラボ 編集部
クリーンルームの設計施工会社について、対応分野・施工体制・公表実績を公式情報にもとづいてまとめています。
参照した情報:蒲田工業 クリーンルームの設計・施工/公益社団法人 日本空気清浄協会(JACA)/当サイト調べ(掲載12社の公式サイトを2026年8月29日に確認)(2026年8月29日確認)
最終更新:2026年9月24日
