ULPAフィルターとは、HEPAフィルターより小さい粒子を、より高い率で捕集する超高性能のエアフィルターです。フィルターメーカーの日本無機は、粒径0.15μmの粒子を99.9995%以上捕集するものをULPAフィルター、0.3μmの粒子を99.97%以上捕集するものをHEPAフィルターと定義しています。
ただし、捕集効率の表記は測る粒径や規格によって変わり、メーカー間でもそろっていません。また、医薬品の無菌製造の指針はHEPAフィルターを前提に組み立てられており、清浄度が高い部屋ほどULPAが必須、というわけではありません。
この記事では、HEPAとの違い、捕集効率の読み方、採用を決める条件、点検と仕様書の書き方を、2026年9月19日に確認した指針とメーカーの公表情報にもとづいて整理します。
目次
ULPAフィルターとHEPAフィルターの違い
ULPAフィルターとHEPAフィルターの違いは、性能を示す粒子の大きさと捕集率です。HEPAは0.3μm、ULPAは0.15μmの粒子を基準にし、ULPAのほうが通り抜ける粒子の割合を小さく抑えます。
| 項目 | HEPAフィルター | ULPAフィルター |
|---|---|---|
| 正式名称 | High Efficiency Particulate Air filter | Ultra Low Penetration Air filter |
| 基準にする粒径 | 0.3μm | 0.15μm |
| 粒子捕集率 | 99.97%以上 | 99.9995%以上 |
| 通り抜ける割合 | 0.03%以下(1万個に3個以下) | 0.0005%以下(100万個に5個以下) |
| 初期圧力損失 | 245Pa以下 | 245Pa以下 |
同社は、捕集率が99.9999%以上のものを「超ULPAフィルタ」と呼ぶこともあるとしています。名前が同じULPAでも性能の幅があるため、製品を比べるときは名称ではなく数値で確認します。
HEPAフィルターの捕集効率は0.3μmで99.97%以上
HEPAフィルターの捕集効率は、医薬品の無菌製造の指針でも同じ数値で示されています。厚生労働省が2011年4月に改訂版を送付した「無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針」は、HEPAフィルターを粒径0.3μm以上の微粒子を少なくとも99.97%の効率で捕捉する空気用フィルターと定義しています。クリーンルーム用のFFU(ファンフィルターユニット)では、0.3μm粒子で99.99%以上を公表する製品もあります。
ULPAフィルターの捕集効率は粒径で読む
ULPAフィルターの捕集効率は、どの大きさの粒子で測った値かを必ずセットで読む必要があります。同じULPAでも、メーカーによって基準の粒径と捕集率の表記が違うためです。
検索上位に出るメーカー3社の製品ページを、2026年9月19日に確認しました。
| メーカー・製品 | 公表している性能 | 用途として挙げているもの |
|---|---|---|
| 関計 標準型ULPAフィルタ | 0.15μm以上の塵埃を99.9995%以上捕集 | 半導体、原子力・医療関連施設 |
| 日本無機 アトモスミクロフィルタ(標準形) | 粒子径0.1μmの微粒子を99.9995%捕集 | 医薬品工場・電子工場・食品工場・医療施設など |
| 忍足研究所 ULPAフィルタ | 0.15μmの粒子に対して99.999%以上の捕集率 | 半導体の生産工場のような高い清浄度のクリーンルームや生産装置 |
たとえば捕集率99.999%と99.9995%では、通り抜ける割合が0.001%と0.0005%で2倍違います。「ULPA相当」「ULPAクラス」とだけ書かれた見積もりは、粒径と捕集率、試験方法を書き足してもらうと、後で性能を確かめられます。
ULPAフィルターの規格と等級
ULPAフィルターの等級は、欧州規格のEN 1822ではU15・U16・U17、国際規格のISO 29463ではISO 50 U〜ISO 75 Uで表します。
どちらも、フィルターを最も通り抜けやすい粒子の大きさ(MPPS)で測った捕集率で分けます。MPPS(Most Penetrating Particle Size)とは、エアフィルターの捕集率が最も低くなる粒子の大きさのことです。フィルターメーカーのCamfilは、MPPSはおおむね0.1〜0.2μmの範囲にあると説明しています。
| 区分 | EN 1822 | ISO 29463 | MPPSでの捕集率(全体) |
|---|---|---|---|
| HEPA | H13 | ISO 35 H | 99.95%以上 |
| HEPA | — | ISO 40 H | 99.99%以上 |
| HEPA | H14 | ISO 45 H | 99.995%以上 |
| ULPA | — | ISO 50 U | 99.999%以上 |
| ULPA | U15 | ISO 55 U | 99.9995%以上 |
| ULPA | — | ISO 60 U | 99.9999%以上 |
| ULPA | U16 | ISO 65 U | 99.99995%以上 |
| ULPA | — | ISO 70 U | 99.99999%以上 |
| ULPA | U17 | ISO 75 U | 99.999995%以上 |
同じフィルターでも規格が変わると呼び名が変わる
EMWは、MPPSで99.9993%のフィルターはEN 1822ではHEPAのH14、ISO 29463ではULPAのISO 50 Uに分類されると説明しています。海外製品や輸入設備では、どちらの規格の等級かを確認する必要があります。同社によると、ISO 29463ができた後もEN 1822は廃止されていません。
ULPAフィルターの読み方と定義
ULPAは「ウルパ」と読み、Ultra Low Penetration Air filter(超低透過率エアフィルター)の略です。HEPAは「ヘパ」と読みます。
東芝ライフスタイルのよくある質問でも「ULPA(ウルパ)フィルター」「HEPA(へパ)フィルタ」と表記されています。
日本では、クリーンルームの用語をJIS Z 8122(コンタミネーションコントロール用語)が定めています。日本産業標準調査会のJIS検索によると、この規格は2024年9月20日に追補で改正されています(2026年9月19日確認)。改正後の本文は当サイトでは確認できていないため、仕様書でJISを引用するときは、改正を含む最新の版で定義を確かめてください。
医薬品の分野では、先の指針がアイソレータを「HEPAフィルター又はULPAフィルター(ultra low penetration air filter)によりろ過した空気を供給」する装置と定義しており、ULPAの正式名称も同じ表記です。
ULPAフィルターが使われる場所
ULPAフィルターが使われるのは、半導体の製造工場のように、ごく小さな粒子まで管理が必要なクリーンルームと生産装置が中心です。メーカー各社も、用途の筆頭に半導体を挙げています。
クリーンルームの天井に並べるFFUは、標準がHEPAで、ULPAは選択肢として用意されていることが多くあります。
| 製品 | 標準のフィルター | ULPAの扱い |
|---|---|---|
| コトヒラ工業 FFU(KFU2シリーズ) | HEPA(0.3μm以上の粒子で99.99%以上) | オプション。本体6型式のうちULPA用の交換フィルター型式があるのは06H・10H・15H・20Hの4型式。HEPA仕様とはH寸法・風量・取付金具が異なる |
| 日本エアーテック ダクト接続型FFU(AFU-C-25) | HEPA(0.3μm粒子で99.99%以上) | より高い清浄度に対応したULPA仕様も対応可能 |
ULPAに変えると、FFUの高さや風量、取り付け方まで変わる製品があるということです。天井内の寸法や空調の風量計算に関わるため、フィルターの種類は設計の初期に決めます。FFUの仕組みと選び方はFFUとは、半導体工場の清浄度の考え方は半導体のクリーンルームとはで解説しています。
ULPAフィルターを選ばなくてよい条件
ULPAフィルターは、工程が求める清浄度をHEPAで満たせるなら選ぶ必要はありません。性能の高さではなく、守りたい製品と工程の要求から決めるのが基本です。
判断の材料になるのが、医薬品の無菌製造の指針です。最も清浄度が高い「重要区域(グレードA)」は、空気1m³当たりの0.5μm以上の粒子を3,520個以下とする区域で、ISO 5に相当します。この区域で使うフィルターについて、指針は0.3μm以上の粒子を99.97%以上捕らえる性能を示すHEPAフィルターの証明書を求めています。ULPAの名前が出るのは、アイソレータの定義で「HEPA又はULPA」と並べて書かれている箇所です。
- 医薬品・再生医療の無菌操作区域——指針の要件はHEPAを前提に書かれている。管理の中心はフィルターの種類ではなく、完全性の確認(リーク試験)と気流
- 管理したい粒子が0.3μmより大きい工程——0.15μm前後での捕集率の差は、HEPAとULPAを選び分ける決め手になりにくい
- 標準品のFFUやクリーンブースで足りる場合——製品によっては、ULPA仕様にすると寸法や風量が変わり、選べる機種も減る
反対に、ULPAを検討するのは、0.1〜0.2μm前後の粒子が製品の不良に直結する工程です。どのクラスが必要かはクリーンルームのクラスとは、医薬品のグレードの考え方はクリーンルームのグレードとはで整理しています。
ULPAフィルターの点検とリーク試験
ULPAフィルターもHEPAフィルターも、据付け時と定期的なリーク試験、差圧の確認で性能を保ちます。ろ材そのものの性能が高くても、枠との接着部や取付部から漏れれば清浄度は保てません。
先の指針は、無菌操作区域のHEPAフィルターについて次の管理を求めています。ULPAを使う場合も、同じ項目で点検計画を立てると漏れがありません。
| 項目 | 指針の内容 |
|---|---|
| 品質証明 | 0.3μm以上の粒子を99.97%以上捕らえる性能を示す供給者の証明書を添付する |
| リーク試験 | 据付け時と定期的に行う。グレードA・Bでは PAO(ポリアルファオレフィン)等の適切なエアロゾルを使う |
| 頻度 | 重要区域と直接支援区域は最低でも1年に1回。使用条件が過酷な場合などは1年に2回以上が望ましい |
| 吹出し風速 | グレードAでは均一性を据付け時と定期的に検査する |
| 差圧 | 据付け時と定期的に検査する。目詰まりのリスクが大きい場合は日常管理に含める |
交換の時期は、差圧の上昇と風量の低下から判断します。判断の手順はクリーンルームのHEPAフィルターの交換頻度で扱っています。
ULPAフィルターを仕様書に書く項目
ULPAフィルターを発注するときは、「ULPA」という名称ではなく、粒径・捕集率・試験の規格・枚数と配置を仕様書に書きます。名称だけでは、前の章で見たとおり性能の幅を特定できないためです。
- 性能——基準の粒径と捕集率(例:0.15μmで99.9995%以上)、またはEN 1822・ISO 29463の等級
- 検査の方法——工場出荷時の個別試験の成績書と、据付け後のリーク試験を誰が行うか
- 設置する機器——FFU・吹出口ユニット・クリーンベンチ・エアシャワーのどこに使うか。ULPA仕様で寸法や風量が変わるか
- 交換の条件——差圧の上限値、交換の作業範囲、交換後の再試験
- 予備品——交換用フィルターの型式と、調達にかかる期間
フィルターは部屋全体の空調と一体で決まるため、フィルター単体ではなく、清浄度・換気回数・気流とあわせて施工会社に伝えます。換気回数の決め方はクリーンルームの換気回数、空調の仕組みはクリーンルームの空調、作業台だけを清浄にする装置はクリーンベンチの清浄度で解説しています。
当サイトでは、クリーンルームの設計施工会社をクリーンルーム設計施工会社の比較ページで公表情報つきで並べています。半導体工場は半導体クリーンルームの施工会社、医薬品工場は医薬品GMPクリーンルームの施工会社も参考にしてください。
ULPAフィルターに関するよくある質問
ULPAフィルターについて、HEPAフィルターとの違い、読み方、医薬品の無菌室に必須かどうか、FFUをULPA仕様にすると寸法や風量がどう変わるかなど、採用を検討するときに多い質問に本文の内容をもとに答えます。
HEPAフィルターとULPAフィルターの違いは何ですか?
性能を示す粒径と捕集率が違います。フィルターメーカーの日本無機の定義では、HEPAは0.3μmの粒子を99.97%以上、ULPAは0.15μmの粒子を99.9995%以上捕集します。初期圧力損失の上限はどちらも245Pa以下です。
ULPAフィルターの読み方は何ですか?
「ウルパ」と読みます。Ultra Low Penetration Air filterの略で、HEPAフィルター(ヘパ)より小さい粒子を高い率で捕集するエアフィルターです。
医薬品の無菌室にはULPAフィルターが必要ですか?
必須とはされていません。厚生労働省が送付した無菌操作法の指針は、最も清浄度が高いグレードAの区域でも、0.3μm以上の粒子を99.97%以上捕らえるHEPAフィルターを前提にしています。重視されるのは、リーク試験による完全性の確認です。
FFUをULPAフィルター仕様にすると何が変わりますか?
製品によって寸法や風量が変わります。コトヒラ工業のFFUでは、ULPA仕様はHEPA仕様とH寸法・風量・取付金具が異なり、ULPA用の交換フィルター型式があるのは本体6型式のうち4型式です。天井内の寸法と空調の風量計算に関わるため、設計の初期に決めます。
この記事を書いた人
執筆・編集:クリーンルームラボ 編集部
クリーンルームの設計施工会社について、対応分野・施工体制・公表実績を公式情報にもとづいてまとめています。
参照した情報:厚生労働省 事務連絡「無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針」の改訂について(平成23年4月20日)/「無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針」本文(医薬品医療機器総合機構 掲載PDF)/日本産業標準調査会 JIS検索「JIS Z 8122 コンタミネーションコントロール用語」(2026年8月29日確認)
最終更新:2026年9月24日
