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クリーンルームの静電気対策は?
イオナイザー・接地・加湿の使い分けと除電マット

最終更新:2026年9月24日

クリーンルームの静電気対策は? イオナイザー・接地・加湿の使い分けと除電マット付帯設備クリーンルームの静電気対策は?イオナイザー・接地・加湿の使い分けと除電マット

クリーンルームの静電気対策は、接地、除電(イオナイザー)、加湿、帯電防止材料の4つを組み合わせるのが基本です。導電性のものは接地で逃がし、接地できない樹脂やフィルムはイオナイザーで中和します。

帯電した製品は、空気中の微粒子を引き寄せます。放電すれば電子部品そのものが壊れることもあります。加湿すれば帯電は起きにくくなりますが、工程の温湿度条件で湿度を上げられない部屋も多く、加湿だけには頼れません。

この記事では、静電気対策が要る理由、4つの手段の使い分け、イオナイザーと湿度の関係、除電マットと床の接地、帯電防止ウェア、関係する法令と指針、発注前に決める項目までを整理します。

目次
  1. クリーンルームの静電気対策が要る3つの理由
  2. クリーンルームの静電気対策は4つの手段
  3. クリーンルームの除電はイオナイザーで行う
  4. クリーンルームの静電気対策と湿度の関係
  5. 除電マットと床の接地はクリーンルームの設計で決める
  6. クリーンルームの帯電防止ウェアの選び方
  7. クリーンルームの静電気対策で守る法令と指針
  8. クリーンルームの静電気対策を発注前に決める5項目
  9. クリーンルームの静電気対策に関するよくある質問

クリーンルームの静電気対策が要る3つの理由

クリーンルームの静電気対策が要る理由は、微粒子の吸着、放電による製品の破壊、可燃物への着火の3つです。どれに当たるかで、優先する対策と求める性能が変わります。

静電気が起こす3つの問題
問題起きること影響を受けやすい工程
微粒子の吸着帯電した製品や部材が、空気中の微粒子を引き寄せて付着させる半導体、液晶、フィルム、光学部品
放電による破壊人や物にたまった電気が一気に流れ、電子部品の素子を壊す電子部品の組立、検査、搬送
可燃物への着火放電の火花が、溶剤の蒸気や可燃性の粉体に着火する溶剤を使う洗浄・塗布、粉体の取り扱い

1つ目の吸着は、清浄な部屋ならではの問題です。フィルタで空気をどれだけきれいにしても、製品が帯電していれば残った微粒子を引き寄せます。清浄度クラスを上げても歩留まりが上がらないとき、静電気が原因になっていることがあります。

2つ目の放電による破壊は、電子部品の工程で問題になります。人が感じないほどの小さな放電でも、微細な素子は壊れることがあります。壊れ方によっては検査で見つからず、出荷後に不良として表に出ることもあります。

3つ目の着火は、作業者の安全に関わる問題です。溶剤を使う工程や、可燃性の粉体を扱う工程では、静電気の火花が着火源になります。この場合は、後で触れる労働安全衛生規則の対象になることがあります。清浄度以外の管理条件の全体像は半導体のクリーンルームとはでも整理しています。

クリーンルームの静電気対策は4つの手段

クリーンルームの静電気対策の手段は、接地、除電、加湿、帯電防止材料の4つです。それぞれ効く相手が違うため、1つで全部をまかなうことはできません。帯電するものの材質で使い分けます。

静電気対策の4つの手段
手段しくみ効く相手効かない・注意する点
接地(アース)たまった電気を大地へ逃がす金属の設備、治具、導電性の床や作業台、人樹脂やフィルムなど電気を通さない物には効かない
除電(イオナイザー)プラスとマイナスのイオンを当てて中和する接地できない樹脂、フィルム、ガラス、製品そのものイオンが届く範囲に限られる。放電針の清掃が要る
加湿空気中の水分で表面から電気を逃がしやすくする部屋全体の帯電のしやすさ工程の湿度条件で上げられない場合がある
帯電防止材料帯電しにくい、または電気を逃がしやすい材料を使う床材、マット、ウェア、容器、包装材接地とセットでないと電気の逃げ場がない

考え方の出発点は、接地できるものは接地し、接地できないものだけを除電するという順番です。接地は電源も要らず、一度つなげば効果が続きます。イオナイザーは便利ですが、台数と保守の手間が増えるため、接地で逃がせるものにまで使う必要はありません。

電気を通さない物の扱いが、特に問題になります。製品のトレイ、保護フィルム、樹脂の容器などは、接地しても電気が逃げません。こうした物は、帯電しにくい材料に置き換えるか、イオナイザーで中和します。材料の置き換えは工程の条件に関わるため、製品の設計部門とも相談して決めてください。

クリーンルームの除電はイオナイザーで行う

イオナイザーとは、プラスとマイナスのイオンを作って空気中に送り、帯電した物の電気を中和する装置です。電気を通さない製品やフィルムの静電気を取り除けるため、除電の中心になります。

イオナイザーには、イオンを送る方法の違いでいくつかの形があります。送風で届けるもの、圧縮空気で吹き付けるもの、部屋の気流に乗せるものなどです。どの形を選ぶかは、除電したい範囲と、部屋の気流を乱してよいかで決まります。

イオナイザーの主な形と使う場所
形除電する範囲向いている場所注意する点
ファン型作業台の上など、局所組立・検査の作業台ファンの風が周囲の気流を乱すことがある
ノズル・ガン型狭い範囲にピンポイント部品の表面、装置の内部圧縮空気の清浄さも管理が要る
バー型搬送ラインの幅フィルムやシートの搬送、装置の出口対象物との距離で効果が変わる
天井設置型部屋や区画の全体一方向流の区域部屋の気流に乗せるため、気流の設計と一体で考える

気をつけたいのが、イオナイザーの風がクリーンルームの設計気流を乱すことです。天井から床へ一様に流れる一方向流の区域に、横向きの風を当てれば、粒子を舞い上げるおそれがあります。風を使わない形や、部屋の気流に乗せる形を選ぶと、この問題を避けやすくなります。気流の考え方はクリーンルームの空調の仕組みで解説しています。

イオナイザーは入れて終わりではありません。イオンを作る放電針は、使ううちに汚れや摩耗で性能が落ちます。放電針から微粒子が出ることもあるため、清掃と交換の時期をメーカーに確認し、保守の計画に入れてください。性能が落ちていないかは、除電にかかる時間を定期に測って確かめます。

クリーンルームの静電気対策と湿度の関係

クリーンルームの静電気は、湿度が低いほど起きやすく、湿度を上げると起きにくくなります。ただし湿度は製品や工程の条件で決まるため、静電気対策のために自由に上げられるとは限りません。

湿度が上がると、物の表面に薄い水分の膜ができ、そこを伝って電気が逃げやすくなります。冬に静電気が増えるのは、空気が乾燥するためです。室内でも、冬場や乾燥した工程で帯電のトラブルが増える傾向があります。

一方で、室内の湿度は静電気だけで決められません。水分を嫌う製品や薬液を扱う工程では、湿度を低く保つことそのものが品質の条件になります。こうした部屋で帯電を抑えるには、加湿ではなく接地とイオナイザーで対応します。

湿度の条件別に見た静電気対策の考え方
湿度の条件静電気の起きやすさ対策の中心
湿度を上げられる工程加湿で抑えやすい加湿を基本に、接地で補う
湿度を一定に保つ工程季節で変わりにくい接地と帯電防止材料を基本に、必要な場所で除電
湿度を低く保つ工程起きやすい接地とイオナイザーを基本にする

湿度の目標値は、静電気の都合より先に、製品と工程の要求から決めます。法令が求める条件と製品が求める条件の両方をどう決めるかはクリーンルームの温湿度管理で整理しています。温湿度が先に決まれば、静電気対策に使える手段も自然に絞られます。

除電マットと床の接地はクリーンルームの設計で決める

人の帯電を抑えるには、導電性の床や除電マット、導電性の靴、接地の配線をひとつながりにすることが要ります。どれか1つが欠けると電気の逃げ場がなくなるため、床の工事の段階で決めておく必要があります。

人は歩くだけで帯電します。靴底と床がこすれるたびに電気が生まれ、体にたまります。この電気を逃がすには、人から靴、靴から床、床から大地へと、電気が流れる道がつながっていなければなりません。

人の帯電を逃がすための要素と役割
要素役割欠けたときに起きること
導電性の靴人の体から床へ電気を通す床が導電性でも、人の電気が逃げない
導電性の床・除電マット靴から受けた電気を接地へ通す靴が導電性でも、床で電気が止まる
接地の配線床やマットから大地へ電気を逃がす床とマットに電気がたまったままになる
リストストラップ座って作業する人を作業台の接地へつなぐ座ると靴と床の接触が弱まり、逃げ道が細くなる

除電マットは、既存の床の上に敷いて使えるため、後から対策するときの手段になります。ただし、マットを敷いただけで接地の線をつないでいなければ、電気は逃げません。敷く場所ごとに接地の端子を用意できるかを確かめてください。

新設や改修のときは、床材そのものを導電性にして、接地を床の工事に含める方法があります。後から床に接地の線を足すのは手間がかかるため、設計の段階で決めておくのが合理的です。床材の選び方はクリーンルームの床材にまとめています。

クリーンルームの帯電防止ウェアの選び方

クリーンルームの帯電防止ウェアは、生地に電気を逃がす糸を織り込み、体や衣服にたまる電気を抑える作業着です。ただしウェアだけでは人の体は接地されないため、導電性の靴と床とセットで考えます。

このウェアは、もともと人から出る微粒子を外に出さないための服です。そのうえで帯電防止の性能を持たせることで、ウェアそのものが微粒子を引き寄せたり、放電したりするのを防ぎます。選ぶときは、次の点を確かめてください。

  • 帯電防止の性能を示す試験の結果——メーカーがどの規格・方法で性能を確かめているかを見ます
  • 洗濯を重ねたときの性能——繰り返し洗うと性能が落ちることがあるため、耐久の考え方を確認します
  • 靴・手袋との組み合わせ——体の電気を逃がす道が、ウェアから靴、床へつながるかを見ます
  • 清浄度クラスとの対応——発塵の少なさとあわせて、部屋の清浄度に合うかを確かめます

ウェアの着方も静電気に関わります。私服の上に重ねて着ると、中の服が帯電することがあります。更衣の手順とあわせて、ウェアの下に着る物のルールも決めておくと安心です。入室までの手順はクリーンルームの入室手順で解説しています。

クリーンルームの静電気対策で守る法令と指針

静電気で爆発や火災が起きるおそれがある設備には、労働安全衛生規則第287条が、接地や除電などの静電気を除去する措置を義務づけています。製品を守る対策とは別に、安全のための対策として確認が要ります。

第287条は、事業者が一定の設備を使う場合に、静電気による爆発や火災が生ずるおそれがあるときの措置を定めています。求められているのは、接地、除電剤の使用、湿気の付与、点火源となるおそれのない除電装置の使用、その他静電気を除去するための措置です。対象の設備は次のとおりです。

労働安全衛生規則第287条の対象設備(要約)
号対象の設備(要約)
第1号危険物をタンク自動車、タンク車、ドラム缶等に注入する設備
第2号危険物を収納するタンク自動車、タンク車、ドラム缶等の設備
第3号引火性の物を含有する塗料、接着剤等を塗布する設備
第4号危険物や危険物が発生する乾燥物を加熱乾燥する乾燥設備、またはその附属設備
第5号可燃性の粉状の物のスパウト移送、ふるい分け等を行う設備
第6号前各号のほか、化学設備(配管を除く)またはその附属設備

出典:厚生労働省 法令等データベース「労働安全衛生規則」第二百八十七条を2026年9月11日に確認し、要約しました。自社の設備が対象になるかは、条文と所轄の労働基準監督署で確認してください。

溶剤で洗浄する工程や、引火性の接着剤を塗る工程は対象になり得ます。こうした区域でイオナイザーを使う場合は、装置そのものが着火源にならないかを確かめる必要があります。引火性の物を扱う区域の設備の考え方は防爆対応のクリーンルームの比較ページにまとめています。

静電気の安全対策の考え方は、労働安全衛生総合研究所の技術指針「静電気安全指針」(TR-No.42)に体系的にまとめられています。抄録では、基本原則として接地・ボンディング、不導体の排除、不導体の静電気対策、作業者の帯電防止・接地、爆発性雰囲気の防止、安全管理の6つを挙げています(2026年9月11日確認)。電子部品を静電気から守る管理については、国際規格のIEC 61340-5-1があります。

クリーンルームの静電気対策を発注前に決める5項目

クリーンルームの静電気対策を施工会社に相談する前に、守る対象、帯電の現状、湿度の条件、気流との関係、引き渡し時の確認方法の5つを決めておくと、提案を同じ条件で比べられます。

  1. 守る対象——微粒子の吸着を防ぎたいのか、電子部品の破壊を防ぎたいのか、着火を防ぎたいのかを決めます
  2. 帯電の現状——どこで、何が、どのくらい帯電しているかを測ります。測った値がないと、対策の効果を確かめられません
  3. 湿度の条件——工程が求める湿度の範囲を先に決めます。加湿を使えるかどうかがここで決まります
  4. 気流との関係——イオナイザーを置く区域の気流の向きと、風を使ってよいかを決めます
  5. 引き渡し時の確認方法——床やマットの接地、イオナイザーの除電の性能を、どの方法で確かめるかを決めます

床の接地や、天井に組み込むイオナイザーは、内装や空調と一緒に施工するものです。後から足すと、床の張り替えや天井の開口が必要になり、費用が膨らみます。新設や改修の段階で、静電気対策を要求仕様に書いておいてください。相談から引き渡しまでの流れはクリーンルームの施工手順にまとめています。

当サイトでは、半導体・電子部品工場に対応する設計施工会社を半導体工場のクリーンルームの比較ページで公表情報つきで並べています。用途を問わず全体から探す場合はクリーンルーム設計施工会社の比較ページから、対応範囲と実績で絞り込んでください。

参照:厚生労働省 法令等データベース「労働安全衛生規則」/労働安全衛生総合研究所「静電気安全指針」(いずれも2026年9月11日確認)

クリーンルームの静電気対策に関するよくある質問

クリーンルームの静電気対策について、何から手を付けるか、加湿だけで防げるか、除電マットを敷けば人の静電気が逃げるか、イオナイザーが気流に与える影響など、発注前に多い質問に本文の内容をもとに答えます。

クリーンルームの静電気対策は何から始めればよいですか?

帯電しているものが導電性かどうかを確かめることから始めます。金属の設備や導電性の床、人は接地で電気を逃がし、接地できない樹脂やフィルム、製品そのものはイオナイザーで中和します。接地できるものは接地し、できないものだけを除電するのが基本の順番です。

加湿だけでクリーンルームの静電気は防げますか?

加湿すると帯電は起きにくくなりますが、加湿だけに頼るのはおすすめしません。水分を嫌う製品や薬液を扱う工程では湿度を低く保つことが品質の条件になり、上げられないためです。湿度は工程の要求から先に決め、足りない部分を接地とイオナイザーで補ってください。

除電マットを敷けば人の静電気は逃げますか?

マットだけでは逃げません。人の電気は、導電性の靴からマットへ、マットから接地の線を通って大地へ逃げます。靴が導電性でない場合や、マットに接地の線をつないでいない場合は、電気の逃げ場がありません。敷く場所ごとに接地の端子を用意できるかを確かめてください。

イオナイザーはクリーンルームの気流に影響しますか?

形によっては影響します。ファンで風を送る形は、天井から床へ一様に流れる一方向流の区域で横向きの風を作り、粒子を舞い上げるおそれがあります。気流を乱したくない区域では、風を使わない形や、部屋の気流に乗せる形を選んでください。

この記事を書いた人

執筆・編集:クリーンルームラボ 編集部

クリーンルームの設計施工会社について、対応分野・施工体制・公表実績を公式情報にもとづいてまとめています。

参照した情報:厚生労働省 法令等データベース「労働安全衛生規則」(第二百八十七条)/労働安全衛生総合研究所 技術指針「静電気安全指針」TR-No.42/日本産業標準調査会(JISC)(2026年8月29日確認)

最終更新:2026年9月24日