クリーンルームの温湿度は「何度に設定すればよいか」で決まるものではありません。人が働く空間として法令が求める範囲と、そこで作る製品が求める範囲の2つが重なった部分が、実際の設定値になります。
この記事では、建築物衛生法施行令と事務所衛生基準規則が定めている温度・相対湿度の範囲を条文で確認したうえで、製品要求との関係と、設計段階で決めておくべき3項目を整理します。許容幅の決め方は空調の容量と費用に直結するため、見積もりを依頼する前に社内で固めておくと各社の金額を同じ前提で比べられます。温湿度を外したときに製品と設備に何が起きるかも、湿度が低い場合と高い場合に分けて整理しました。
目次
クリーンルームの温湿度は法令と製品要求の2階建てで決まる
クリーンルームの温湿度管理とは、法令が定める範囲と製品が求める範囲の両方を満たすように空調を設計し、その状態を維持する運用のことです。どちらか一方だけでは設定値が決まりません。
| 層 | 根拠 | 範囲の性質 |
|---|---|---|
| 法令(人が働く空間として) | 建築物衛生法施行令/事務所衛生基準規則 | 温度18〜28℃・相対湿度40〜70%。下限であって目標値ではない |
| 製品要求(作るものとして) | 製品仕様・顧客要求・社内基準 | 法令より狭い範囲を指定されることが多い |
※2026年9月時点の法令にもとづきます。製品要求の範囲は業種と製品によって異なります。
つまり、法令の範囲を満たしていても製品要求を外れることはあるということです。設計の出発点は製品要求のほうで、法令は最低限として同時に満たす、という順序になります。
法令が定める温湿度の範囲
温湿度の法令基準は2つあります。どちらも温度18〜28℃、相対湿度40〜70%という同じ数値を示しています。
- 建築物衛生法施行令——建築物環境衛生管理基準として、温度は18度以上28度以下、相対湿度は40パーセント以上70パーセント以下と定めています。気流は毎秒0.5メートル以下です。居室の温度を外気より低くする場合は、その差を著しくしないことも求められています
- 事務所衛生基準規則——空気調和設備を設けている場合、室の気温が18度以上28度以下、相対湿度が40パーセント以上70パーセント以下になるように努めなければならないと定めています
事務所衛生基準規則は努力義務の形式です。同規則は作業環境測定についても、原則として2月以内ごとに1回の実施を求めています。
参照:e-Gov法令検索|建築物衛生法施行令/e-Gov法令検索|事務所衛生基準規則
温湿度を外すと製品と設備に何が起きるか
許容幅を外れたときの影響は、湿度が低いときと高いときで方向が逆になります。どちらに振れやすいかで、必要な空調の機能が変わります。
- 湿度が低すぎる——静電気が発生しやすくなります。帯電した微粒子が製品に付着する、電子部品が損傷するといった不良につながります
- 湿度が高すぎる——結露とカビのリスクが上がります。表面の結露は製品への直接的な汚染要因になります
- 温度が振れる——寸法精度が要る加工や測定では、材料と測定機器の寸法が変わります
- 作業者への影響——防塵衣を着た状態では体感温度が上がるため、法令の範囲内でも作業性が落ちることがあります
湿度の振れ方は季節と外気条件で決まるため、夏と冬のどちらが厳しいかを先に押さえると、除湿と加湿のどちらに設備投資が要るかが見えます(クリーンルームの空調の仕組み)。
設計段階で決めておく3項目
温湿度管理は運用の話に見えますが、実際には設計段階でほぼ決まります。見積もりを依頼する前に、次の3つを社内で固めておくと比較が正確になります。
- 許容幅——±3℃なのか±0.5℃なのかで空調の構成が変わります。狭めるほど容量と費用が増えるため、製品要求として本当に必要な幅かを確認します
- 測定点——室の代表点だけか、装置の内部まで測るか。測定点が増えるほどセンサーと配線の工事範囲が広がります
- 記録の方法——記録が必要か、どの頻度で残すか。監査対応が要る場合は、自動記録の仕組みまで設計に含めます
この3つが決まっていないまま相見積もりを取ると、各社が違う前提で積算するため金額を比べられません。仕様書に書く形で揃えてください(見積もりの取り方)。実際の依頼先はクリーンルームの設計施工会社の比較で確認できます。
クリーンルームの温湿度管理に関するよくある質問
クリーンルームの温湿度管理について、法令の基準値、製品要求がない場合の決め方、許容幅と費用の関係、低湿度で静電気が起きる理由、測定の頻度など、よくある質問に本文の内容をもとに答えます。
クリーンルームの温度と湿度に法的な基準はありますか?
あります。建築物衛生法施行令の建築物環境衛生管理基準と事務所衛生基準規則が、いずれも温度18度以上28度以下、相対湿度40パーセント以上70パーセント以下を示しています。ただしこれは人が働く空間としての範囲で、製品が求める範囲はこれより狭いことが一般的です。
製品要求がない場合は法令の範囲に合わせればよいですか?
法令の範囲を満たすことは必要ですが、それが目標値という意味ではありません。作業内容と使用する材料によって適した範囲は変わるため、社内で管理値を決めたうえで設計に渡してください。管理値がないまま発注すると、各社が違う前提で積算します。
許容幅を狭くすると費用はどれくらい変わりますか?
幅を狭めるほど空調の容量と制御が高度になり、費用は上がります。金額の差は室の規模と要求精度で変わるため一律には言えませんが、±0.5℃といった精度が必要かどうかは製品要求に立ち返って確認する価値があります。
湿度が低いと静電気が起きるのはなぜですか?
空気中の水分が少ないと電荷が逃げにくくなり、帯電した状態が保たれやすくなるためです。帯電すると微粒子が製品に付着しやすくなり、電子部品では損傷の原因にもなります。低湿側に振れやすい冬季の対策として加湿の計画が必要になります。
温湿度の測定はどのくらいの頻度で必要ですか?
事務所衛生基準規則は作業環境測定について原則2月以内ごとに1回の実施を求めています。ただし製品要求にもとづく管理では連続監視が求められることもあるため、法令上の頻度と社内の管理要求は分けて考えてください。
この記事を書いた人
執筆・編集:クリーンルームラボ 編集部
クリーンルームの設計施工会社について、対応分野・施工体制・公表実績を公式情報にもとづいてまとめています。
参照した情報:e-Gov法令検索|建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令/e-Gov法令検索|事務所衛生基準規則(2026年8月29日確認)
最終更新:2026年9月1日
