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規格・清浄度

細胞培養加工施設(CPC)とは?
構造設備基準と設計で決めること

最終更新:2026年9月25日

細胞培養加工施設(CPC)とは? 構造設備基準と設計で決めること規格・清浄度細胞培養加工施設(CPC)とは?構造設備基準と設計で決めること

細胞培養加工施設(CPC)の構造設備は、再生医療等安全性確保法施行規則の第89条が定める基準に適合させる必要があります。基準が求めるのは区域の区分、清浄な空気と差圧の管理、清掃しやすい内装などで、清浄度クラスの数値は条文に書かれていません。

数値が決まっていないぶん、どの区域をどの清浄度と室圧にするかは、製造する細胞と無菌操作の方式から設計段階で決めることになります。医療機関内の施設は地方厚生局への届出、医療機関外の施設は厚生労働大臣の許可が必要で、どちらも構造設備の書類を添えて手続きします。

この記事では、基準の中身、区域の分け方、公表されている清浄度と室圧の例、手続きの違い、発注前に決める項目を順に整理します。

目次
  1. 細胞培養加工施設の構造設備基準は省令第89条
  2. 細胞培養加工施設の区域は清浄度で分ける
  3. 細胞培養加工施設の清浄度と室圧の公表例
  4. 細胞培養加工施設は無菌操作の方式で変わる
  5. 細胞培養加工施設の届出と許可の違い
  6. 細胞培養加工施設の設計で発注前に決めること
  7. 細胞培養加工施設の施工会社を選ぶポイント
  8. 細胞培養加工施設に関するよくある質問

細胞培養加工施設の構造設備基準は省令第89条

細胞培養加工施設の構造設備基準は、再生医療等安全性確保法の第42条を受けて、同法施行規則の第89条に17の号で定められています。

許可の申請でも届出でも、この基準に適合していることが前提になります(2026年9月18日にe-Gov法令検索で条文を確認)。

細胞培養加工施設とは、再生医療等に用いる細胞に培養その他の加工を施す施設のことです。法令上の名称は「特定細胞加工物等製造施設」で、特定細胞加工施設や細胞加工施設、CPC・CPFとも呼ばれます。法律の第2条は、特定細胞加工物を「再生医療等に用いられる細胞加工物のうち再生医療等製品であるもの以外のもの」と定義しています。再生医療等製品として製造する場合は、医薬品医療機器等法の枠組みになります。

第89条のうち、クリーンルームの設計に直接かかわる号を抜き出すと次のとおりです。

細胞培養加工施設の構造設備基準のうち設計に関わる主な号
号対象基準の内容(要約)
第2号施設全体混同と汚染を防ぎ、作業に支障のない配置で、清掃と保守が容易であること
第4号受入れ・保管の区域原料の受入れや保管を行う区域は、製造を行う他の区域から区分されていること
第7号作業室屋外に直接面する出入口がないこと(汚染防止の構造があれば除く)、天井からごみが落ちない構造、パイプやダクトの表面にごみがたまらない構造
第8号作業室・作業管理区域温度と、必要に応じて湿度を維持管理できる構造と設備
第9号清浄度管理区域天井・壁・床はなめらかでひび割れがなく、じんあいを出さず、消毒液の噴霧洗浄に耐えること。排水口は原則設置しない
第10号無菌操作等区域第9号と同様の内装に加え、排水口と流しを設置しないこと
第12号無菌操作を行う区域フィルターで処理した清浄な空気を供給し、適切な差圧管理を行える構造と設備
第13号病原性微生物等を扱う区域適切な陰圧管理を行える構造と設備
第15号空気処理システム微生物等による汚染を防止するために適切な構造

出典:e-Gov法令検索「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」第八十九条を2026年9月18日に確認し、要約しました

表を見ると分かるとおり、基準は「清浄な空気を供すること」「適切な差圧管理」といった書き方で、ISOクラスや差圧の数値は定めていません。第98条も、構造設備は製造する特定細胞加工物等の内容に応じて適切なものでなければならない、としています。数値は、製造する細胞と工程のリスクから事業者が決めて設計に落とし込みます。清浄度の区分の考え方はクリーンルームのグレードとはで整理しています。

細胞培養加工施設の区域は清浄度で分ける

細胞培養加工施設の区域は、一般区域、清浄度管理区域、その中で無菌操作を行う無菌操作等区域に分けるのが基本です。第89条は区域ごとに内装・排水・空気の基準を変えているため、区域の線引きが設計の出発点になります。

実際の施設がどう区域を分けているかは、公表例で確かめられます。慶應義塾大学病院の細胞培養加工施設(KHCPC)は、2019年7月に届け出た施設で、公式ページで区域の構成を公開しています。

慶應義塾大学病院 細胞培養加工施設の区域構成(公表例)
部屋面積設定しているグレード無菌操作に使う設備
細胞調製室-124㎡グレードB安全キャビネット1台
細胞調製室-3内のクリーンブース7.8㎡グレードB安全キャビネット1台
細胞調製室-344㎡グレードCアイソレーター2台
細胞調製室-226㎡グレードD安全キャビネットとアイソレーター各1台。外廊下から直接入れる

出典:慶應義塾大学病院 臨床研究推進センター「細胞培養加工施設(Cell Processing Center : CPC)」(2026年9月18日確認)。施設の総面積は205㎡、無菌操作等区域はグレードAと公表されています

この施設では、外廊下に接する一般区域の内側に清浄度管理区域(グレードD・C・B)を置き、その中の安全キャビネットやアイソレーターを無菌操作等区域(グレードA)としています。無菌操作は部屋全体ではなく、キャビネットやアイソレーターの中で行い、部屋はその背景環境として清浄度を保つという二重の構成です。

第89条第4号が求める受入れ・保管の区域の区分や、第11号が求める動物・微生物を扱う区域の空気処理システムの別系統化も、この段階で間取りに反映します。人が清浄度の低い区域から高い区域へ進むには更衣が必要になるため、前室と更衣室の配置も同時に決めます。入室の流れはクリーンルームの入室手順で扱っています。

細胞培養加工施設の清浄度と室圧の公表例

細胞培養加工施設の清浄度と室圧は条文に数値がないため、メーカーが公表している仕様例が相場観をつかむ手がかりになります。日本エアーテックはCPF(細胞加工施設)の製品ページで、部屋ごとの清浄度・生菌数・室内圧力を公表しています。

日本エアーテックが公表しているCPFの部屋別仕様
部屋清浄度生菌数室内圧力
細胞培養室ISOクラス710個/m³以下+5Pa〜+30Pa
培養準備室ISOクラス818個/m³以下+20Pa
資料保存室ISOクラス818個/m³以下+15Pa
着衣室ISOクラス8—+20Pa
脱衣室ISOクラス8—-15Pa
更衣室ISOクラス8—+15Pa

出典:日本エアーテック株式会社「CPF(細胞加工施設)」製品ページの規格・仕様(2026年9月18日確認)。温度22℃・湿度55%も併記されています。1社の設計例であり、法令上の基準値ではありません

この例では、培養室をISOクラス7とし、その周りをISOクラス8の部屋で囲んでいます。6室のうち脱衣室だけが-15Paの陰圧で、ほかの5室は陽圧に設定されています。日本エアーテックは、一般には陽圧構造だが一部で陰圧構造が必要とされる場合もある、と説明しています。

ISOクラスの数字と旧クラスの対応はクリーンルームのクラスとは、部屋ごとに圧力の段差をつける考え方はクリーンルームの換気回数と差圧で解説しています。公表例をそのまま自社の仕様にするのではなく、自社の工程で無菌操作をどこで行うかを決めてから数値を当てはめてください。

細胞培養加工施設は無菌操作の方式で変わる

細胞培養加工施設の広さと清浄度の組み立ては、無菌操作を安全キャビネットで行うか、アイソレーターなどの閉鎖式で行うかで変わります。第89条も、閉鎖式操作で無菌性が確保できる場合は一部の要件を適用しないと定めています。

無菌操作の方式ごとの設計への影響
方式作業する空間部屋に求められやすいこと第89条との関係
安全キャビネット前面が開いたキャビネットの中で、作業者が手を入れて操作するキャビネットの周りの部屋も高い清浄度に保つ。更衣と入室の管理が重くなる第10号・第12号の要件がそのまま関わる
アイソレーター・閉鎖式装置外気と隔てた装置の中で、グローブや自動化で操作する装置の外側の部屋は、開放式より低い区分で設計できる場合がある第10号イと第12号に「閉鎖式操作で無菌性が確保できる場合は、この限りでない」とある

先に見た慶應義塾大学病院の例では、安全キャビネットで無菌操作を行う細胞調製室-1とクリーンブースをグレードB、アイソレーター2台を置く細胞調製室-3をグレードCに設定しています。グレードDの細胞調製室-2は、造血幹細胞の調製や試験製造、非臨床用の細胞製造などに使うと公表されています。方式を選ぶときは、装置の費用だけでなく、周りの部屋に求める清浄度と更衣の負担がどう変わるかを合わせて比べる必要があります。

安全キャビネットは作業者と環境も守る装置で、作業対象だけを守るクリーンベンチとは役割が違います。違いはクリーンベンチの清浄度と安全キャビネットの違いで整理しています。どの方式を採るかは、製造する細胞の種類と1日の製造件数、作業者の人数から決まるため、設計を依頼する前に製造部門と決めておく項目です。

細胞培養加工施設の届出と許可の違い

細胞培養加工施設で製造を始めるには、国内の医療機関内なら地方厚生局への届出、医療機関外なら厚生労働大臣の許可、国外なら認定が施設ごとに必要です。どの手続きでも、構造設備に関する書類の提出や基準への適合が求められます。

細胞培養加工施設の製造に必要な手続きの違い
項目届出(法第40条)許可(法第35条)
対象病院・診療所に設置する施設など届出の対象にならない国内の医療機関外の施設
提出先管轄の地方厚生局厚生労働省。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の調査あり
構造設備の確認届出に構造設備に関する書類を添付する書面または実地の調査を行い、基準に適合しなければ許可されない
有効期間—5年ごとに更新(施行令)
構造設備を変えたとき30日以内に変更の届出30日以内に変更の届出

出典:厚生労働省「特定細胞加工物等製造施設について(概要)」、e-Gov法令検索「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」第35条〜第40条、同法施行令(いずれも2026年9月18日確認)

設計の立場で見落としやすいのは、稼働後に構造設備を変えると30日以内の変更届出が必要になる点です。区画の追加や空調の変更を後から行うと、そのたびに手続きが発生します。将来の増設を見込むなら、最初の設計で区域の余地を残しておくほうが手戻りが少なくなります。

施行規則の第102条は、新たに製造を始める場合に、構造設備と製造手順が期待される結果を与えることを検証し、文書にすることを求めています。竣工後の清浄度や差圧の測定記録は、この検証の材料になります。引き渡し時にどの測定をどの状態で行うかは、見積もりの段階で施工会社と取り決めてください。

厚生労働省の案内では、届出や許可を受けずに製造した場合の罰則も示されています。許可を受けずに製造した場合は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、届出をせずに製造した場合は20万円以下の罰金です。手続きの書類のうち、構造設備に関する書類は設計図面と仕様が土台になるため、設計を依頼する段階で手続きの種類を施工会社に伝えておくと準備が重なりません。

細胞培養加工施設の設計で発注前に決めること

細胞培養加工施設の設計を依頼する前に、製造する細胞と工程、無菌操作の方式、区域と動線、清浄度と室圧の目標、竣工時の検証方法の5つを決めておくと、施工会社の提案を同じ条件で比べられます。

  1. 製造する細胞と工程——自家か他家か、1日に何件製造するか、病原性を持つ微生物等を扱うか(第13号の陰圧管理が要るか)を決めます
  2. 無菌操作の方式——安全キャビネットかアイソレーター・閉鎖式装置か。台数と置き場所まで決めます
  3. 区域と動線——受入れ・保管の区域、清浄度管理区域、無菌操作等区域の範囲と、人・物・廃棄物の通り道を図にします
  4. 清浄度・室圧・温湿度の目標——区域ごとのISOクラス、隣室との差圧の向き、温度と湿度の許容幅を書きます
  5. 竣工時の検証方法——浮遊微粒子数、差圧、風量などを、どの状態で測り、どの記録を引き渡してもらうかを決めます
細胞培養加工施設の仕様書に書く項目の例
項目書き方の例関係する第89条の号
内装清浄度管理区域の天井・壁・床は、消毒液の噴霧洗浄に耐える仕上げとする第9号・第10号
排水無菌操作等区域に排水口と流しを設けない第10号
空調区域ごとの清浄度と差圧の目標値、フィルターの種類、空調系統の分け方第11号・第12号・第15号
温湿度作業室の温度と湿度の許容幅、監視の方法第8号
監視浮遊微粒子数や差圧を連続で監視するか、記録をどう残すか第102条の検証の材料

第89条第9号の「消毒液等による噴霧洗浄に耐える」内装は、床材や壁パネルの選び方に直結します。選び方はクリーンルームの床材と壁パネル、温湿度の許容幅の決め方はクリーンルームの温湿度管理で扱っています。監視を連続で行うかどうかは、竣工後の運用費と記録の手間に効く判断です。慶應義塾大学病院の例では、各細胞調製室と無菌操作等区域で浮遊微粒子数を連続で計測していると公表されています。

細胞培養加工施設の施工会社を選ぶポイント

細胞培養加工施設の施工会社は、再生医療の施設を対象分野として公表しているか、陽圧と陰圧の両方を設計できるか、竣工後の検証まで対応するかの3点で比べるのが基本です。一般の工業用クリーンルームとは求められる管理が違うためです。

公式サイトで細胞加工施設を独立したページで案内している会社もあります。日本エアーテックは部屋ごとの仕様例に加えて「設置後のバリデーションも行います」と記載し、蒲田工業は無菌管理区域・清浄度管理区域・一般管理区域に応じた清浄度・室圧・温湿度で設計・施工し、運用後も環境モニタリングで管理すると説明しています(いずれも2026年9月18日確認)。ページの有無だけでなく、区域構成や検証の範囲まで具体的に書かれているかを読み比べてください。

細胞培養加工施設を含むバイオ・再生医療施設の設計施工会社はバイオクリーンルームの施工会社の比較、工業用クリーンルームとの違いはバイオクリーンルームとはで扱っています。

費用は、区域の数と面積、無菌操作の方式、空調の系統の分け方で大きく変わります。クリーンルーム全般の公表価格と内訳はクリーンルームの費用はいくら?、相談から引き渡しまでの流れと見積もりの取り方はクリーンルームの施工手順で整理しています。見積もりを比べるときは、前の章で決めた5項目を同じ条件で渡すことが前提です。

当サイトでは、バイオ・再生医療施設に対応する設計施工会社をバイオクリーンルームの施工会社の比較ページで公表情報つきで並べています。微生物を管理するクリーンルームの基本はバイオクリーンルームとは、用途を問わず全体から探す場合はクリーンルーム設計施工会社の比較ページをご覧ください。

参照:e-Gov法令検索「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」/e-Gov法令検索「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」/厚生労働省「特定細胞加工物等製造施設について(概要)」/慶應義塾大学病院 臨床研究推進センター「細胞培養加工施設」/日本エアーテック株式会社「CPF(細胞加工施設)」/蒲田工業株式会社「CPF・CPC(細胞培養加工施設)クリーンルーム」

細胞培養加工施設に関するよくある質問

細胞培養加工施設について、清浄度が法令で決まっているか、特定細胞加工物製造施設との呼び方の違い、クリニック内に設ける場合の手続き、稼働後に改修するときの届出など、設計前に多い質問に本文の内容をもとに答えます。

細胞培養加工施設の清浄度は法令で決まっていますか?

再生医療等安全性確保法施行規則の第89条は、無菌操作を行う区域にフィルターで処理した清浄な空気を供し、適切な差圧管理を行うことなどを求めていますが、ISOクラスの数値は定めていません。清浄度の目標は、製造する細胞と無菌操作の方式から事業者が決めます。

特定細胞加工物製造施設と細胞培養加工施設は同じものですか?

同じ施設を指す呼び方です。法令上の名称は特定細胞加工物等製造施設で、再生医療等に用いる細胞に培養その他の加工を施す施設をいいます。細胞培養加工施設、細胞加工施設、CPC、CPFとも呼ばれます。

クリニックの中に細胞培養加工施設をつくる場合は許可が必要ですか?

病院や診療所に設置する施設は、許可ではなく管轄の地方厚生局への届出の対象です。医療機関の外で製造する場合は厚生労働大臣の許可が必要になります。どちらの場合も、構造設備は施行規則第89条の基準に適合させる必要があります。

細胞培養加工施設を稼働後に改修するときに手続きは要りますか?

構造設備を変更したときは、許可事業者も届出事業者も、30日以内に変更の届出が必要です。区画の追加や空調の変更は構造設備の変更にあたり得るため、改修を計画する段階で手続きの要否を確認してください。

この記事を書いた人

執筆・編集:クリーンルームラボ 編集部

クリーンルームの設計施工会社について、対応分野・施工体制・公表実績を公式情報にもとづいてまとめています。

参照した情報:e-Gov法令検索「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」/e-Gov法令検索「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」(第八十九条)/e-Gov法令検索「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令」/厚生労働省「特定細胞加工物等製造施設について(概要)」(2026年8月29日確認)

最終更新:2026年9月25日