クリーンルームの防火の規制は、消防法と建築基準法の2本立てです。工場の中につくる場合、排煙設備・防火区画・内装制限は建築基準法、消火器や自動火災報知設備などの消防用設備、ビニールカーテンの防炎、溶剤の危険物は消防法の側で決まります。
クリーンルームは窓のない部屋になりやすく、建築基準法の「窓その他の開口部を有しない居室」に当たると、排煙設備や内装の仕上げの規定がかかります。「消防法の規制」と一括りにして相談すると、確認先を取り違えやすくなります。
この記事では、規制ごとの法律と条文、問題になりやすい条件、工事で必要な消防の届出を、2026年9月16日にe-Gov法令検索で確認した条文にもとづいて整理します。
目次
クリーンルームの消防法と建築基準法の分担
クリーンルームにかかる防火の規制は、建物の構造や部屋のつくりは建築基準法、設備の設置や物品・危険物の扱いは消防法という分担で考えると整理できます。確認先も、建築確認を扱う行政庁・確認検査機関と、所轄の消防署に分かれます。
| 規制 | 法律 | 主な条文 | 問題になる点 |
|---|---|---|---|
| 排煙設備 | 建築基準法 | 施行令第116条の2・第126条の2 | 開放できる窓のない部屋は排煙設備が必要になる |
| 内装制限 | 建築基準法 | 施行令第128条の3の2・第128条の5 | 床面積50㎡超で開放できる窓のない部屋は、壁と天井の仕上げが制限される |
| 防火区画 | 建築基準法 | 施行令第112条 | 区画を貫通する空調ダクトに防火設備が必要 |
| 消防用設備 | 消防法 | 施行令第10条・第11条・第21条ほか | 間仕切りや天井で感知器・消火設備の配置が変わる |
| 防炎規制 | 消防法 | 法第8条の3・施行令第4条の3 | 病院などではカーテン類に防炎性能が必要 |
| 危険物 | 消防法 | 法第10条・危険物の規制に関する政令 | 洗浄に使う溶剤の量で規制が変わる |
消防法にも排煙設備の規定(施行令第28条)はありますが、対象は地下街、劇場などの舞台部、キャバレー・百貨店・駐車場などの地階・無窓階(床面積1,000㎡以上)に限られ、工場(消防法施行令 別表第一の(12)項イ)は対象に入っていません。工場のクリーンルームで排煙設備が問題になるのは、建築基準法の側です。
病院・診療所の中につくる細胞培養や無菌製剤の部屋は、消防法上の用途が(6)項になり、工場とは設置基準や防炎規制の扱いが変わります。建物全体の用途を先に確かめてから条文を当てることが、確認の出発点です。
クリーンルームの排煙設備は無窓居室で決まる
クリーンルームの排煙設備は、開放できる窓などの面積が床面積の50分の1に満たない「排煙上の無窓居室」に当たるかどうかで決まります。建築基準法施行令第126条の2は、この居室に排煙設備を設けることを求めています。
排煙上の無窓居室とは、天井または壁の一定の部分にある開放できる開口部の面積の合計が、居室の床面積の50分の1未満の居室のことです(施行令第116条の2第1項第2号。国土交通大臣が定める給気口・排気口を設けた場合は、大臣が定める方法で算出した割合)。どの高さの部分を有効とするかは、床面から天井までの高さに応じて国土交通大臣が定めます。クリーンルームは外気に開く窓を持たないのが普通なので、設計の初期から無窓居室に当たる前提で考えるのが安全です。
| 対象 | 条件 | 100㎡以内ごとの防煙壁による除外 |
|---|---|---|
| 特殊建築物 | 法別表第一(い)欄(1)〜(4)項の用途で延べ面積500㎡超 | — |
| 階数3以上の建築物 | 延べ面積500㎡超 | あり(高さ31m以下の部分の居室) |
| 排煙上の無窓居室 | 第116条の2第1項第2号に該当する居室 | 条文上の除外なし |
| 大規模な建築物の居室 | 延べ面積1,000㎡超の建築物で、床面積200㎡超の居室 | あり(高さ31m以下の部分の居室) |
排煙設備が不要になる場合
第126条の2第1項のただし書には、排煙設備を設けなくてよい場合が列挙されています。このうち関わりやすいのは、機械製作工場など主要構造部が不燃材料で造られた火災のおそれの少ない建築物(第4号)と、天井の高さや壁・天井の仕上げ材料を考慮して国土交通大臣が定める部分(第5号)です。どちらに当たるかは建物の条件で決まるため、建築確認の段階で確認検査機関に確かめてください。
排煙窓と機械排煙の選び方
排煙の方法には、外気に開く排煙窓を使う自然排煙と、排煙機で煙を出す機械排煙があります。外気に開く排煙窓は、清浄度と室圧の管理と両立させる工夫が要るため、排煙の方式は空調の設計と一緒に決めることになります。室圧の考え方はクリーンルームの換気回数と差圧、空調の構成はクリーンルームの空調の仕組みで解説しています。
クリーンルームの内装制限は準不燃材料
床面積が50㎡を超え、開放できる窓などが床面積の50分の1に満たないクリーンルームは、壁と天井の室内側の仕上げを準不燃材料にする内装制限の対象になります。建築基準法施行令第128条の3の2第1号がこの居室を定めているためです。
同条は、内装制限を受ける「窓その他の開口部を有しない居室」を2つの号で定めています(天井の高さが6mを超えるものを除く)。第1号は開口部の面積で決まるため、建物の用途を問わず窓のない部屋に当てはまりやすい規定です。第2号は、建築基準法第28条第1項が採光の窓を求める住宅・学校・病院などの居室のうち、ただし書の「温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室」で採光の規定に適合しないもので、病院などの中につくる場合に問題になります。
| 号 | 該当する居室 | 求められる仕上げ(第128条の5第5項) |
|---|---|---|
| 第1号 | 床面積50㎡超で、開放できる開口部が床面積の50分の1未満の居室 | 居室と、そこから地上に通じる主な廊下・階段などの壁と天井を準不燃材料(または大臣が定める材料の組合せ)とする |
| 第2号 | 法第28条第1項が採光を求める居室のうち、ただし書の温湿度調整を必要とする作業を行う作業室などで、採光の規定に適合しないもの |
壁と天井は、清掃しやすく粉じんを出さないことが優先されますが、内装制限がかかる場合は防火の性能も同時に満たす材料を選ぶ必要があります。パネルや塗装の仕様を比べるときは、準不燃材料の認定を受けた製品かどうかを見積もりの段階で確認してください。床材と壁パネルの選び方はクリーンルームの床材と壁パネルで扱っています。
クリーンルームの防火区画とダクトの貫通
クリーンルームの防火区画で実務上の論点になるのは、空調のダクトが防火区画の壁や床を貫通する部分に、防火ダンパーなどの防火設備が必要になる点です。空調のダクトを多く使う設備なので、区画を横切る経路の確認が欠かせません。
建築基準法施行令第112条第1項は、耐火建築物・準耐火建築物などで延べ面積が1,500㎡を超えるものを、床面積1,500㎡以内ごとに防火区画することを求めています(自動式のスプリンクラー設備などを設けた部分は床面積の2分の1を除いて計算)。ただし、工場その他これらに類する用途の部分で用途上やむを得ないものは、この面積区画の対象外とされています(同項ただし書第1号)。
| 論点 | 条文 | 確認すること |
|---|---|---|
| 面積区画 | 施行令第112条第1項 | 延べ面積1,500㎡超の耐火建築物等か。工場の部分で用途上やむを得ないものとして扱えるか |
| ダクトの貫通 | 施行令第112条第21項 | 換気・冷暖房の風道が準耐火構造の防火区画を貫通する部分に、特定防火設備などを設けるか |
| 別の建築物とみなす区画 | 施行令第126条の2第2項 | 開口部のない準耐火構造の床・壁などで分離し、排煙の規定を別の建築物として扱えるか |
既存の工場の中にクリーンルームを増設する場合は、建物側の防火区画をまたいで空調やダクトを通すことにならないかを、レイアウトを決める前に確かめてください。区画をまたぐ経路が増えるほど、防火設備の数と点検の手間が増えます。既存工場の改修で費用を左右する要素はクリーンルーム改修工事の比較ページでも整理しています。
クリーンルームの消防用設備の設置基準
消火器や自動火災報知設備などの消防用設備は、クリーンルーム単体ではなく、建物の用途・延べ面積・階の条件で設置が決まります。
間仕切りや天井を新しく設ける工事では、感知器や消火設備の配置を変える必要が出るのが主な論点です。
工場・作業場(消防法施行令 別表第一の(12)項イ)に当てはめると、主な設備の設置基準は次のとおりです。
| 設備 | 建物全体の基準 | 階ごとの基準 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 消火器具 | 延べ面積150㎡以上 | 地階・無窓階・3階以上の階で床面積50㎡以上 | 施行令第10条 |
| 屋内消火栓設備 | 延べ面積700㎡以上 | 地階・無窓階・4階以上の階で床面積150㎡以上 | 施行令第11条 |
| 自動火災報知設備 | 延べ面積500㎡以上 | 地階・無窓階・3階以上の階で床面積300㎡以上 | 施行令第21条 |
表の「無窓階」は、消防法施行規則第5条の5で定める避難上・消火活動上有効な開口部を持たない階のことで、判定の単位は部屋ではなく階です。建築基準法の無窓居室とは物差しが違うため、部屋に窓がなくても、同じ階の外壁に有効な開口部があれば無窓階に当たらないことがあります。
天井の内側には、空調の吹出口やフィルターが並びます。新しい天井や間仕切りで囲まれた部分に、感知器や消火設備の警戒・放水の範囲が届くかは、所轄の消防署と消防設備の業者を交えて確認してください。
クリーンブースのビニールカーテンと防炎規制
クリーンブースのビニールカーテンに防炎性能が必要かどうかは、ブースを置く建物が消防法の防炎防火対象物に当たるかで決まります。高層建築物・地下街・病院などは対象で、工場は高さ31mを超える高層建築物でなければ対象に入っていません。
消防法第8条の3は、高層建築物、地下街、劇場、病院その他政令で定める防火対象物で使うカーテンなどの防炎対象物品に、基準以上の防炎性能を求めています。施行令第4条の3が定める防炎防火対象物は、別表第一の(1)〜(4)項、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(12)項ロ、(16の3)項と工事中の建築物などです。
| 建物の例 | 別表第一の用途 | 防炎規制 |
|---|---|---|
| 工場・作業場 | (12)項イ | 対象外(高さ31mを超える高層建築物なら対象) |
| 病院・診療所 | (6)項 | 対象 |
| 映画スタジオ・テレビスタジオ | (12)項ロ | 対象 |
| 倉庫 | (14)項 | 対象外(高層建築物なら対象) |
施行令第4条の3第3項が挙げる防炎対象物品は、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゅうたん等、展示用の合板、舞台の幕や大道具用の合板、工事用シートです。クリーンブースのビニールカーテンがこのうちの「カーテン」として扱われるかは条文だけでは決まらないため、防炎防火対象物にブースを置く場合は所轄の消防署に確認してください。
防炎規制の対象外の工場でも、防炎性能のあるシートを選んでおくと、将来ブースを別の建物へ移すときの制約が減ります。ブースの構造と価格はクリーンブースとはで扱っています。
クリーンルームで溶剤を使うときの危険物規制
クリーンルームで洗浄用の溶剤を扱う場合は、保管・使用する量が消防法の指定数量以上になると、危険物の製造所・貯蔵所・取扱所としての許可が必要になります。指定数量未満でも、一定量以上は市町村の火災予防条例の規制を受けます。
消防法第10条は、指定数量以上の危険物を、許可を受けた製造所・貯蔵所・取扱所以外の場所で貯蔵・取り扱うことを禁じています。品名の異なる危険物を同じ場所で扱うときは、それぞれの数量を指定数量で割った値の合計が1以上になると、指定数量以上とみなされます。
| 品名(第四類) | 性質 | 指定数量 |
|---|---|---|
| 第一石油類 | 非水溶性液体 | 200L |
| 第一石油類 | 水溶性液体 | 400L |
| アルコール類 | — | 400L |
| 第二石油類 | 非水溶性液体 | 1,000L |
消防法の別表第一の備考は、アルコール類を「一分子を構成する炭素の原子の数が一個から三個までの飽和一価アルコール」と定めています(組成等を勘案して総務省令で定めるものを除く)。どの品名に当たるかは製品の安全データシートで確かめ、使う部屋ごとの数量を合計して判断します。溶剤を扱う区域では静電気が着火源になることもあるため、設備の仕様と合わせて所轄の消防署に相談してください。
クリーンルーム工事で必要な消防の届出
クリーンルームの工事で消防用設備を設置・変更する場合は、甲種消防設備士による着工の10日前までの届出と、工事完了から4日以内の設置の届出・検査が関わります。どちらが必要かは、工事の内容と建物の用途・規模で決まります。
- 着工届(消防法第17条の14)——甲種消防設備士が、政令で定める工事に着手する日の10日前までに、消防長または消防署長に届け出ます
- 設置届と検査(消防法第17条の3の2・施行規則第31条の3)——政令で定める防火対象物の関係者が、設置工事の完了日から4日以内に届け出て検査を受けます。工場((12)項イ)は、延べ面積300㎡以上で消防長または消防署長が指定するものが対象です(施行令第35条第1項第3号)
- 建築確認との調整——排煙設備・内装制限・防火区画は建築基準法の手続きで確認されるため、確認申請が要る工事かどうかを設計者に確かめます
病院や入院施設のある診療所((6)項イ(1)〜(3))は延べ面積にかかわらず、入院施設のない診療所((6)項イ(4))は延べ面積300㎡以上で、消防長などの指定がなくても設置届の対象です(施行令第35条第1項第1号・第2号)。建物の用途によって手続きの範囲が変わるため、設計を依頼する段階で建物の用途と延べ面積を施工会社に伝えてください。
施工会社に相談するときは、建築基準法と消防法のどちらの確認をどこまで設計に含むかを、見積もりの範囲として確かめてください。相談から引き渡しまでの手順はクリーンルームの施工手順、費用の内訳はクリーンルームの費用はいくら?で整理しています。当サイトでは、設計施工会社をクリーンルーム設計施工会社の比較ページで公表情報つきで並べています。
クリーンルームの消防法に関するよくある質問
クリーンルームの消防法と建築基準法の規制について、排煙設備を決める法律、壁と天井の内装制限、クリーンブースのビニールカーテンに防炎性能が要るか、窓のない部屋と無窓階の関係など、設計前に多い質問に本文の内容をもとに答えます。
クリーンルームの排煙設備は消防法で決まりますか?
工場の場合は、主に建築基準法で決まります。消防法施行令第28条の排煙設備は地下街や劇場の舞台部、一部の用途の地階・無窓階が対象で、工場は含まれていません。建築基準法施行令第126条の2により、開放できる開口部が床面積の50分の1未満の居室には排煙設備が必要です。
クリーンルームの壁や天井に内装制限はかかりますか?
かかる場合があります。建築基準法施行令第128条の3の2第1号は、床面積50㎡超で開放できる開口部が床面積の50分の1未満の居室を内装制限の対象としており、居室と地上に通じる主な通路の壁と天井を準不燃材料などにする必要があります。天井の高さが6mを超える居室は除かれます。
工場に置くクリーンブースのビニールカーテンは防炎が必須ですか?
消防法の防炎規制の対象は、高層建築物、地下街、病院など政令で定める防火対象物です。工場は高さ31mを超える高層建築物でなければ対象に入っていません。病院などに置く場合や、ビニールカーテンの扱いに迷う場合は、所轄の消防署に確認してください。
クリーンルームに窓がなければ消防法の無窓階になりますか?
必ずしもなりません。消防法の無窓階は、避難上・消火活動上有効な開口部を持たない階のことで、判定の単位は部屋ではなく階です。部屋に窓がなくても、同じ階の外壁に基準を満たす開口部があれば、無窓階に当たらないことがあります。
この記事を書いた人
執筆・編集:クリーンルームラボ 編集部
クリーンルームの設計施工会社について、対応分野・施工体制・公表実績を公式情報にもとづいてまとめています。
参照した情報:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」(第百十二条・第百十六条の二・第百二十六条の二・第百二十八条の三の二・第百二十八条の五)/e-Gov法令検索「建築基準法」(第二十八条・第三十五条・第三十五条の二)/e-Gov法令検索「消防法施行令」(第四条の三・第十条・第十一条・第二十一条・第二十八条・第三十五条)/e-Gov法令検索「消防法」(第八条の三・第九条の四・第十条・第十七条の三の二・第十七条の十四)/e-Gov法令検索「消防法施行規則」(第五条の五・第三十一条の三)/e-Gov法令検索「危険物の規制に関する政令」(別表第三)(2026年8月29日確認)
最終更新:2026年9月24日
