恒温恒湿室は、温度と湿度を設定値に保ち続ける部屋です。クリーンルームが「粒子を減らす」部屋であるのに対し、恒温恒湿室は「環境条件を動かさない」部屋で、目的がまったく違います。ただし空調技術の延長線上にあるため、施工を手がける会社は重なります。
この記事では、恒温恒湿室・環境試験室・電磁シールドルーム・無響室といった特殊環境室の違いと、計画するときの確認事項を整理します。これらはクリーンルームと同じ会社に相談できることが多く、まとめて計画したほうが調整が楽になる場合があります。
恒温恒湿室とクリーンルームは目的が違う
清浄度を目的とするのがクリーンルーム、温湿度の安定を目的とするのが恒温恒湿室です。両方が要る場合は、どちらの要求が厳しいかで設備構成が決まります。
恒温恒湿室とは、室内の温度と湿度を決められた範囲に保つことを目的とした部屋のことです。清浄度を目的とするクリーンルームとは狙いが違い、要求される精度も設備も変わります(2026年8月29日時点)。
まず、それぞれが何を制御する部屋なのかを整理します。
| 部屋 | 制御する対象 | 主な用途 |
|---|---|---|
| クリーンルーム | 空気中の浮遊粒子(必要に応じて微生物) | 半導体、医薬品、食品、精密機器の製造 |
| 恒温恒湿室 | 温度と湿度を設定値に保つ | 計測・検査、材料試験、標準室、精密加工 |
| 環境試験室 | 温度・湿度を意図的に変化させて負荷をかける | 製品の耐久試験、自動車・電機の評価 |
| 電磁シールドルーム | 電磁波の出入りを遮る | 電波測定、EMC試験、機密性が求められる区域 |
| 無響室・防音試験室 | 音の反射・出入りを制御する | 音響測定、騒音評価 |
恒温恒湿室と環境試験室は混同されやすいですが、方向が逆です。恒温恒湿室は条件を「動かさない」部屋、環境試験室は条件を「意図的に振る」部屋です。要求仕様書でこの2つを取り違えると、設備の構成がまったく変わります。
恒温恒湿室の計画は許容幅から決まる
恒温恒湿室のコストを決めるのは、面積よりも温湿度の許容幅(何℃・何%まで振れてよいか)です。ここが厳しくなるほど、必要な制御と設備が増えます。
| 許容幅 | 必要になる要素 | 備考 |
|---|---|---|
| ±1〜2℃ | 一般的な空調制御で対応できる範囲 | 標準的な構成 |
| ±0.5℃ | 再熱・再冷の制御、センサー配置の検討、気流の均一化 | 室内の温度分布まで設計対象になる |
| ±0.1℃級 | 室全体の断熱強化、外乱の遮断、多段の制御 | 扉の開閉や人の出入りも外乱になる。前室が必要になることが多い |
| 低湿度(低露点) | デシカント除湿など別方式の除湿設備 | 設備が1系統増え、運転費も増える |
「精度は高いに越したことはない」という決め方は、恒温恒湿室では特に高くつきます。測定対象の要求精度から逆算して、必要な許容幅を根拠つきで決めてください。三機工業は自動車産業向けの全天候環境試験装置を実績分野として挙げており、この領域まで手がける会社もあります。
恒温恒湿室はクリーンルームと同じ会社に頼めるのか
結論として、クリーンルームの設計施工会社に相談できる領域です。いずれも空調・断熱・気密の技術が土台にあり、実際に両方を手がける会社があります。
まとめて相談するメリットと注意点は次のとおりです。
- メリット:窓口が1つになる——同じ建屋に複数の特殊環境室を作る場合、ユーティリティと工事の調整が楽になります
- メリット:条件の整合が取りやすい——隣り合う部屋の熱負荷・排熱が互いに影響するため、同じ設計者が見たほうが安全です
- 注意点:電磁シールドと無響室は専門性が別——遮蔽性能や音響性能は空調とは別の技術体系です。専門メーカーとの協業になることがあります
- 注意点:性能保証の範囲——「±0.1℃を保証する」のか「設備を納める」のかで責任の重さが違います。契約書で確認してください
掲載12社の対応領域はクリーンルーム設計施工会社の比較で確認できます。公式サイトに恒温恒湿室・環境試験室の記載がない会社でも、対応できる場合があります。面談で直接確認してください。
恒温恒湿室の見積もりで確認する項目
温度と湿度の許容幅、測定点の数、外気条件の前提。この3つがそろっていないと、各社の金額は比べられません。
恒温恒湿室の見積もりは、クリーンルームとは確認項目が変わります。次を揃えて依頼してください。
- 設定温湿度と許容幅——設定値だけでなく、何℃・何%まで振れてよいか
- 測定位置——室内のどの位置で許容幅を満たすか。中央1点か複数点か
- 内部発熱——設置する機器の発熱量と人数。これが空調容量を決めます
- 扉の開閉頻度——出入りが多いと外乱が増え、復帰時間が問題になります
- 復帰時間——外乱があったあと何分で設定値に戻るか。仕様として明記します
- 記録の要否——温湿度の連続記録が必要か。データの保存期間も決めます
「測定位置」を書いていない仕様書は、竣工検査で必ず揉めます。室の中央では満たしても壁際では満たさない、ということが起きるためです。どこで測って合否を判定するかを先に決めてください。
恒温恒湿室に関するよくある質問
恒温恒湿室について、環境試験室との目的の違い、クリーンルームの会社に依頼できるか、精度をどこまで上げるべきかなど、計画前に多い質問に本文の内容をもとに答えます。
恒温恒湿室と環境試験室の違いは何ですか?
目的が逆です。恒温恒湿室は温度と湿度を設定値に保ち続ける部屋で、計測・検査・材料試験などに使います。環境試験室は温度・湿度を意図的に変化させて製品に負荷をかける部屋で、耐久試験に使います。要求仕様書でこの2つを取り違えると、設備構成がまったく変わります。
恒温恒湿室はクリーンルームの会社に頼めますか?
相談できる領域です。いずれも空調・断熱・気密の技術が土台にあり、両方を手がける会社があります。ただし電磁シールドルームや無響室は遮蔽性能・音響性能という別の技術体系になるため、専門メーカーとの協業になることがあります。
恒温恒湿室の精度はどこまで上げるべきですか?
測定対象の要求精度から逆算して決めてください。±0.1℃級になると室全体の断熱強化や外乱の遮断が必要になり、扉の開閉や人の出入りも外乱として設計対象になります。「高いに越したことはない」という決め方は費用が大きく増えます。
この記事を書いた人
執筆・編集:クリーンルームラボ 編集部
クリーンルームの設計施工会社について、対応分野・施工体制・公表実績を公式情報にもとづいてまとめています。
参照した情報:蒲田工業 クリーンルームの設計・施工/公益社団法人 日本空気清浄協会(JACA)/当サイト調べ(掲載12社の公式サイトを2026年8月29日に確認)(2026年8月29日確認)
最終更新:2026年8月29日
