減価償却資産の耐用年数表に、「クリーンルーム」という区分はありません。建物、建物附属設備、機械装置のどれに当たるかを構成要素ごとに分け、それぞれの年数を当てていきます。
空調まわりは「冷房、暖房、通風又はボイラー設備」に当たり、冷凍機の出力が22キロワット以下の冷暖房設備で13年、その他のもので15年です。取り外して再使用できるパネル式の間仕切りは「可動間仕切り」で、簡易なもの3年、その他のもの15年とされています(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一・2026年9月21日確認)。
この記事では、区分の分け方、別表の年数、中古で取得した場合の計算、そして税務の年数と設備の実際の更新時期がなぜ一致しないのかを整理します。
目次
クリーンルームの耐用年数は区分ごとに決まる
法定耐用年数とは、減価償却の計算に使うために法令で定められた資産の使用可能期間のことです。クリーンルームは、この表のどこにも一体の資産として載っていません。建物、建物附属設備、機械装置、器具備品に分けて年数を当てます。
国税庁の耐用年数の適用等に関する取扱通達は、2−2−1で「建物の附属設備は、原則として建物本体と区分して耐用年数を適用する」と定めています。木造・合成樹脂造り・木骨モルタル造りの建物の附属設備だけは、建物と一括して適用できるという例外があります(2026年9月21日確認)。
| 構成要素 | 当たりやすい区分 | 判断の手がかり |
|---|---|---|
| 建屋そのもの | 建物 | 構造と用途で年数が決まります。工場用・倉庫用の区分を使います。 |
| 空調機・外調機・ダクト | 建物附属設備 | 冷房、暖房、通風又はボイラー設備に当たります。出力で年数が分かれます。 |
| 照明・配線 | 建物附属設備 | 通達2−2−2は、工場用建物について電灯用配線施設と照明設備を挙げています。 |
| パネル式の間仕切り | 建物附属設備(可動間仕切り) | 取り外して他の場所で再使用できるパネル式・スタッド式が該当します。 |
| 生産設備・製造装置 | 機械及び装置 | 業種別の設備区分で年数が決まります。 |
| クリーンベンチなど単体機器 | 器具及び備品または機械装置 | 建物に固定するか、単体で動かせるかで分かれます。 |
この表は一般的な当てはめの整理で、最終的な区分は個別の契約内容と設置形態で変わります。工事請負契約書の内訳が「一式」だけになっていると、あとから区分できません。発注の段階で、建築工事・空調設備・電気設備・生産設備の内訳を分けて見積書に書いてもらってください。見積書の読み方はクリーンルームの設計と見積もりにまとめています。
クリーンルームの建物附属設備の耐用年数
クリーンルームで金額が大きくなるのは空調設備です。空調設備は建物附属設備の「冷房、暖房、通風又はボイラー設備」に当たり、冷凍機の出力で年数が2つに分かれます。省令の別表第一に載っている年数は次のとおりです。
| 構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 冷房、暖房、通風又はボイラー設備 | 冷暖房設備(冷凍機の出力が22キロワット以下のもの) | 13年 |
| 冷房、暖房、通風又はボイラー設備 | その他のもの | 15年 |
| 電気設備(照明設備を含む。) | 蓄電池電源設備 | 6年 |
| 電気設備(照明設備を含む。) | その他のもの | 15年 |
| 給排水又は衛生設備及びガス設備 | — | 15年 |
| 可動間仕切り | 簡易なもの | 3年 |
| 可動間仕切り | その他のもの | 15年 |
実務で迷いやすいのが2つあります。1つはパッケージエアコンの扱いです。通達2−2−4は、冷却装置と冷風装置が1つのキャビネットに組み合わされたパッケージドタイプでも、ダクトを通じて相当広範囲にわたって冷房するものは器具及び備品の「冷房用機器」ではなく建物附属設備の冷房設備に当たるとしています。
もう1つは出力の読み方です。通達2−2−4は「冷暖房設備」の「冷凍機の出力」を、冷凍機に直結する電動機の出力と定めています。冷暖房共用のものだけでなく冷房専用のものも22キロワット以下の区分に含まれ、冷凍機やボイラーに附属するすべての機器を含めることができるとされています。空調の構成はクリーンルームの空調の仕組みで解説しています。
クリーンルームの機械装置はどの区分か
生産設備は建物附属設備ではなく「機械及び装置」に当たります。機械装置の耐用年数は、設備の名前ではなくその設備を使う業種で決まります。同じクリーンルームでも、半導体工場と食品工場では年数が違います。
| 設備の種類 | 細目 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 電子部品、デバイス又は電子回路製造業用設備 | フラットパネルディスプレイ、半導体集積回路又は半導体素子製造設備 | 5年 |
| 電子部品、デバイス又は電子回路製造業用設備 | プリント配線基板製造設備 | 6年 |
| 電子部品、デバイス又は電子回路製造業用設備 | その他の設備 | 8年 |
| 化学工業用設備 | その他の設備 | 8年 |
| 食料品製造業用設備 | — | 10年 |
| その他の製造業用設備 | — | 9年 |
別表第二は業種ごとに細かく分かれています。自社がどの設備区分に当たるかは、主たる事業と設備の用途で判定します。ここは税務の判断が要る部分です。複数の業種にまたがる工場では、所轄税務署か顧問税理士に確認してください。当サイトの記載は論点の整理であって、申告の根拠にはできません。
クリーンルームを入れる建物の耐用年数
建屋から新築する場合は、建物の耐用年数が別に立ちます。工場用・倉庫用の建物は構造で年数が決まり、鉄骨鉄筋コンクリート造と鉄筋コンクリート造で31年、木造・合成樹脂造で15年です。金属造は骨格材の厚みで3段階に分かれます。
| 構造 | 耐用年数 |
|---|---|
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 31年 |
| れんが造・石造・ブロック造 | 34年 |
| 金属造(骨格材の肉厚4mm超) | 31年 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 24年 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm以下) | 17年 |
| 木造・合成樹脂造 | 15年 |
| 木骨モルタル造 | 14年 |
既存建屋の一部を改修して使う場合は、建物の年数は動きません。追加した空調設備・電気設備・間仕切りを建物附属設備として別に計上します。既存建屋を使うか建て替えるかで償却の形が変わるため、改修の相談は早い段階で設計施工会社に投げてください。改修の進め方はクリーンルーム改修の施工会社比較にまとめています。
クリーンルームの中古取得と耐用年数
中古の工場や設備を買い取ってクリーンルームとして使う場合、法定耐用年数をそのまま使う必要はありません。国税庁は簡便法という計算方法を示しています。使用可能期間を見積もるのが原則で、見積もりが難しいときに簡便法を使います。
| 状況 | 計算方法 |
|---|---|
| 法定耐用年数の全部を経過している | その法定耐用年数の20パーセントに相当する年数。 |
| 法定耐用年数の一部を経過している | 法定耐用年数から経過年数を差し引いた年数に、経過年数の20パーセントに相当する年数を加えた年数。 |
| 端数がある | 1年未満の端数は切り捨てます。2年に満たない場合は2年とします。 |
| 大きな改修をした | 資本的支出の額が取得価額の50パーセントを超えると、簡便法は使えません。 |
クリーンルームの中古取得では、この最後の行が効いてきます。他社が使っていた設備を引き継ぐ場合、フィルタの全数交換、空調機の更新、清浄度の再取得までやると改修費が膨らみます。資本的支出が取得価額の50パーセントを超えると簡便法が使えなくなるため、見積もりの段階で改修費の見通しを立てておいてください。
耐用年数と設備の実際の寿命は別物
法定耐用年数は税務の計算期間であって、設備が何年もつかを示す数字ではありません。クリーンルームの現場で更新時期を決めるのは、差圧の記録と清浄度の測定結果です。年数だけを見て交換の予算を立てると、早すぎるか遅すぎるかのどちらかになります。
| 項目 | 法定耐用年数 | 現場の更新判断 |
|---|---|---|
| 決まり方 | 省令の別表で区分ごとに定められています。 | 差圧・風量・清浄度の実測値で決めます。 |
| 見る対象 | 資産の区分。 | 個々の機器とフィルタ。 |
| 使いどころ | 減価償却費の計算と申告。 | 保全計画、交換部品の予算取り。 |
| ずれる理由 | 業種と構造だけで決まります。 | 外気の粉じん量、稼働時間、清浄度クラスで差が出ます。 |
フィルタはとくにずれが大きい部分です。KAMIYAengは、給気側の環境が良い場合は3〜5年、悪い環境では半年〜1年が交換の目安と言われていると公表しています(2026年9月21日確認)。同じ設備でも環境で10倍近い開きが出ます。差圧の記録がないと、この幅のどこにいるかが分かりません。
実務では、償却の区分と保全の記録を別々の台帳で持つのが現実的です。償却台帳には取得日・取得価額・区分・年数を、保全台帳にはフィルタの設置日と枚数、差圧の日次値、交換履歴を残します。交換の判断基準はHEPAフィルターの交換頻度にまとめています。
運転コストまで含めて見るなら、償却費と電気代を並べて比べてください。清浄度を1ランク上げると送風量が増え、電気代は稼働している間ずっと増え続けます。内訳はクリーンルームの省エネとクリーンルームの費用にまとめています。設計から保守まで相談できる会社はクリーンルーム施工会社の比較で公表情報つきで並べています。
税務の区分と年数は個別の事情で変わります。申告や資産計上の判断は、所轄税務署または顧問税理士に確認してください。この記事は制度の全体像と論点の整理で、根拠にはできません。
クリーンルームの耐用年数に関するよくある質問
クリーンルームの耐用年数について、区分ごとの年数、建物附属設備と機械装置の分け方、パネルの償却年数、中古で取得した場合の計算、年数が過ぎた設備を更新すべきかなど、申告前に多い質問に本文の内容をもとに答えます。
クリーンルームの耐用年数は何年ですか?
耐用年数表に「クリーンルーム」という区分はありません。構成要素ごとに分けて当てます。空調は冷房、暖房、通風又はボイラー設備で、冷凍機の出力が22キロワット以下の冷暖房設備が13年、その他のものが15年です。電気設備と給排水・衛生設備は15年、工場用の鉄筋コンクリート造の建物は31年です(2026年9月21日確認)。
クリーンルームは建物附属設備と機械装置のどちらですか?
設備の性格で分かれます。空調、照明・配線、給排水、パネル式の可動間仕切りは建物附属設備に当たります。生産設備は機械及び装置で、業種別の区分で年数が決まります。工事請負契約書の内訳が「一式」だけだと区分できないため、発注時に内訳を分けてもらってください。
クリーンルームのパネルは何年で償却しますか?
取り外して他の場所で再使用できるパネル式・スタッド式のものは「可動間仕切り」に当たります。省令の別表第一では、簡易なもので3年、その他のもので15年です。材質と構造が簡易で容易に撤去できるものが「簡易なもの」とされています。実際の区分は設置形態によるため、税理士に確認してください。
中古のクリーンルームを買った場合の耐用年数はどうなりますか?
使用可能期間を見積もるのが原則で、難しい場合は簡便法を使います。法定耐用年数の全部を経過していれば法定耐用年数の20パーセント、一部なら残存年数に経過年数の20パーセントを加えた年数です。ただし資本的支出が取得価額の50パーセントを超えると簡便法は使えません。
法定耐用年数が過ぎたらクリーンルームを更新すべきですか?
年数は更新の目安にはなりません。更新の判断は差圧の記録、風量、清浄度の測定結果で行います。フィルタの交換目安は環境によって半年から5年まで幅があると公表されています。償却が終わっていても性能が出ていれば使い続けられますし、逆に年数内でも清浄度が保てなければ更新が要ります。
この記事を書いた人
執筆・編集:クリーンルームラボ 編集部
クリーンルームの設計施工会社について、対応分野・施工体制・公表実績を公式情報にもとづいてまとめています。
参照した情報:e-Gov法令検索 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一・別表第二/国税庁 耐用年数の適用等に関する取扱通達 第2節 建物附属設備/国税庁 タックスアンサー No.5404 中古資産の耐用年数/国税庁 確定申告書等作成コーナー 耐用年数(建物/建物附属設備)(2026年8月29日確認)
最終更新:2026年9月24日
